しかし、その「見えないはずの目」が、明らかにドアの隙間から覗くM君を真っ直ぐに捉えました。
老婆は、歯のない口を耳元まで大きく裂いて、ニタリと笑いました。
M君は悲鳴を上げて転がるように寺を飛び出し、夜の山道を車で狂ったように飛ばして街へ戻りました。
その後、激しい高熱を出して1週間寝込みましたが、幸いにも命に別状はありませんでした。
しかし、恐怖はそれで終わりませんでした。
あれから数ヶ月が経った今でも、M君は毎晩、ある「音」に悩まされています。
深夜の2時を過ぎると、彼が住むアパートの部屋の外から、
「ズ……、ズズ……」
と、何かが床を這うような音が近づいてくるのです。
その音は、玄関のドアの前でピタリと止まります。
そして、ドアの下にある「郵便受け(ポスト)の隙間」が、パタパタと小さく揺れます。
M君は毎晩、ベッドの中で毛布を頭から被り、ガタガタと震えながら、その隙間から聞こえる声を聴いています。
隙間から、歯のない口でヒタヒタと囁く、あの老婆の声です。
「……みーつけた。次は、お前の番だよ……」
M君が調べたその村の葬礼とは、未開の時代に行われていた「生贄(いけにえ)」の儀式だったそうです。
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