「本当に呪われてる君に言うのもなんだけど、ホラーに少しでも携わっているものとして、一言」
「楽しんで!」
そういうと、喫茶店を後にして行った。
封筒には、30万円入っていた。
Bから、山岸さんを紹介されたのはその3日程前のことだった。
「お前に会いたいって人がいる。会って話を聞くだけで、お前の一ヶ月分の稼ぎくらいは現金で払うってさ」
マルチか、宗教か、新手の詐欺。
どれかだろうとまず疑ったが、相手は検索すれば一発で出てくるほどの人間だ。
何かやましいことがあればゆすってやろうと考えて、その日山岸さんと会ったわけだが、会うなり「俺は、『誰でも幽霊が見える方法』を探してる」だった。
そこから先ほどの話に繋がるわけだが、正直ちんぷんかんぷんだ。
しかし、呪われてるノート一冊もらって30万とは割が良い。
その日は上機嫌で帰った。
そこから1週間ほど後、街中の定食屋で昼飯を食べているところに、会社の昼休憩中と思われる集団の内の1人がちらちらとこちらをみていることに気づいた。
こちらが視線をやると、目があった。
グレーのぴっちりしたスーツに身を包んだ、まだ若い女性だ。
その人は意を決したように集団を抜けるとこちらに近づいてきた。
「あのー、本当に失礼なんですけど、最近心霊スポットとか行きました?」
「はい?」
「いや、行ってなかったら別に良いんですけど、なんか最近怪しいものを買っただとかもらっただとか……」
首から下げている社員証に目がいく。大手だ。
「あの、どういう……?」
「私本当に気持ち悪いですよね。ただ、私霊感みたいなのがあって、もし何かそう言うものを持ってるんだとしたら今すぐ捨てた方が良いっていうか、いや、やっぱりなんでもないです。すみません」
そう言って、また集団に戻っていく。「どうしたのー?」と周りの人がこちらを睨んでいるのが目に入るが、女性が「なんでもないから」と制していた。
明らかに都合が良すぎる。これも、山岸さんの計画なのだろうか?
そう思いはしたものの、特に実害があるわけではないのでスルーして昼飯の続きを食べ進めた。
そこからまた数日後、帰宅が夜遅くなった時、人通りの少ない路地の電柱に赤い服に身を包んだ女がじっと立っているのを見かけた。
ふと、ノートのことが頭によぎる。
流し見しただけだったが、たしかあの日記を書いていたやつもよく赤い服を着てデートに向かっていた気がした。
『楽しんで!』


























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