今や、体も少しだが自由が利く。
母と行こうと思うが、扉を小さく叩く音がする。
豪雷の音の間を縫うように、その小さな音がやけに心に響いた。
「・・・・て・・」
「・・・けて・・」
か細く弱い、まるで死の間際の人間が放つ最期の言葉のような。
なのに遮二無二、執念すら感じる声だった。
声の主は、、思い出せない。
こんなにも弱った私を呼んでいる。
それは私を黄泉へ誘う死者の声だろう。
応えれば私は船に乗るのだ。
迷うことは無い、姿は見えぬが母と共に還るのだ。もう決めたことだ。
「・・あけて・・」
煩い、誰が開けるものか。
だが、微かな懇願がこんなにも心に残るのは何故だろう。
何故、この者は何度も私を呼ぶのだろう。
何故、母は私を呼んでくれないのだろう。
分からない、階段を昇り母と行くのだと決めた心が揺れている。
扉の先の光景が、私の伺い知れぬ世界だと気づき始めていた。
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