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妖怪・風習・伝奇

K.Tさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

歌声
長編 2026/05/03 18:08 1,114view

透き通っているわけでも、ハスキーなわけでもない。
ただ、一度聴けば抗えないほど引き込まれる、独特すぎる歌声。

実力以上の「魅力」がそこにはあった。

どういう風の吹き回しか、俺たちのような弱小バンドが彼らと対バンすることになった。

話をつけてきたのは、リーダーのトモだ。
コイツはとにかく音楽が好きなやつでさ。ジュンさんのことも早くから見つけてて、俺に教えてくれたのはコイツだったんだ。

今回の企画も、有名なバンドと近づいて、虎の威を借りてやろうみたいな…そういう「のし上がってやるぜ」みたいな野心は全く無くて、ただ純粋にライブしたかったんだと思う。

さっそくジュンさんから、詳細決めるための打ち合わせしようって連絡が来た。

週末の夜、俺とトモは時間合わせて、待ち合わせ場所に指定されてたスナックが入ってるビルまで歩いて行った。

スナックにしては早い時間だったけどフロア内は結構賑わっていて、ボックス席には既に6人程の客がグラスを手にして盛り上がっていた。

「こっちですよ~」
カウンターの一番奥に座っていたジュンさんが手を振って呼んでくれた。シンセの人も隣に座っている。

「リアルで会うのは初めてですねー。河合です、こちらはうちのシンセ担当の藤村さんです」

俺たちはイスに腰を下ろしながら、軽く自己紹介をし合った。

和やかな雰囲気で段取りはトントンと決まっていき、だいぶん酒もまわってきた頃、藤村さんは電話をするために少し席を外した。
随分無口な人なんだろうな。話にもあんまり入ってきてないみたいだし…。

カウンターの女の子がお菓子のトレイに追加の小袋を足しながら、ジュンさんにマイクを持ってきた。
さっきトモと一緒にデンモクいじってたみたいだから、順番が回ってきたみたいだ。

歌が始まると、さっきまでの喧騒がスッとおさまって、視線がジュンさんに集まってくるのを感じた。
ボックス席の会社員連中や、カウンターの若い男女。常連らしきオッサンに、カウンター奥のマスター達までみんな黙ってその声に聞き惚れていた。

もちろん、俺達もオーディエンスの一員だった。トモはピクリとも動かないで、体中で歌を聞いているようだった。

やっぱり、この人はスゲェなぁ…って我に返ったのは、1番が終わって間奏が流れている時だった。

なんていうか…かすかにだけど、雑音が混じって聞こえたんだよ。
マラカスをゆっくり鳴らすような音…いや、マラカスにしては音に湿度がある感じ。
「ジャラァ…ジャァアラァ…」みたいなね。

初めは曲に入っているSEかと思ったんだけど、それにしてはテンポも合わないし、曲調に違和感があり過ぎる。

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