狐に化かされる。昔話の題材なんかによくある話ですが、それを体験した時の話をしたいと思います。
私の田舎は、海と里山に囲まれたのどかな所です。
鹿や狸、あまり遭遇したくはありませんが、熊もよく出てきます。
そして、明け方には狐がよく出て来ます。
近所の年寄りから聞いた話ですが、どうやら野生動物は海水を飲むために、明け方、海に集合しているようです。山では摂れない塩分を摂取するために。
私は小さいころから眠りが浅く、ちょっとした音で目を覚ましていました。
「ギャッ、ギャッ。」
明け方に聞こえる独特な鳴き声。
これは狐の鳴き声なのですが、犬の鳴き声も一緒に聞こえます。
大人たちは、山から下りてきた狐が、どこかの飼い犬にちょっかいを出しているのだろうと、笑い話にしていました。
しかし、この鳴き声が問題だったのです。
狐はこの鳴き声で人を化かすと、私の地元で古くから言われていました。
狐の鳴き声が赤ん坊の声に聞こえるというのです。
普段、聞いている分には、人の声になど全く聞こえません。
私にも子供がいますので、違いは当然わかります。
人間からはかけ離れた声。例えば、映画に出てくるような、妖怪や怪物が発するような、どこか薄気味悪さを感じる鳴き声です。
里山が近くにあるため、野生動物が頻繁に下りてくるのですが、私たちも山への出入りは頻繁にありました。
特に秋ごろになると、アミタケというキノコがよく採れるため、山への出入りが多くなります。
私の家では味噌汁に入れたり、大根おろしと合わせたりと、よく食べられていました。
スーパーに並んでいるのを見かけますが、中々いい値段をしていて、意外に高級品なんだなと食わず嫌いの私は驚きました。
そして、そのアミタケを採るために、父と父の友人の浩二さんが山へ出かけた時の話です。
父が出かける準備をしているのを見ていると、なぜか私まで連れていかれる事になってしまいました。
キノコ自体があまり好きではないし、虫もそんなに好きじゃない。
山自体がそんなに好きではなかった当時11歳の私を
「やってみなきゃわからない。」
が口癖の父が私も連れて行こうと言い出したのです。
当時の私の食わず嫌いは本当にひどく、どんなきっかけでもいいから、何とか興味を持ってもらいたいという父の思いがあったと、後に母から聞かされました。
私が初めて山に入るということもあり、あまり遅くなると危ないからと、午前中に行って帰って来るように、朝ご飯を食べ終わるとすぐに山へと出かけました。
集落の山側の方に住んでいる浩二さんのお宅に車を止めさせてもらい、3人で歩きながら山へと向かいました。
山と言っても、山道が整備されているわけでもなく、その辺のガードレールの切れ目の所から山へと入っていきました。
シーズンという事もあり、本来は草木が茂っている山の中も、アミタケを求めて入った人によって踏み慣らされ、群生地までの道しるべが出来上がっています。
木々の隙間からは朝日が差し込み、鳥の鳴き声もいつもより、数段、清々しく聞こえます。





















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