湿気をまとった腐葉土の香りがする道を進んでいくと
「おーい。あったぞー。」
浩二さんが大きな松の木の下で手を振っていました。
父と一緒に向かっていくと、松の葉や松ぼっくりに囲まれたところに、黄土色の傘が広がっていました。
群生したキノコを初めて見た私は、傘をつついたり、目いっぱいしゃがみ込んで、下からのぞき込んだりと、しばらく観察をしていました。
「遊んでないで、早く採って帰るぞ。」
こちらに背を向けてアミタケを採っている父の姿を真似て、アミタケの根元を折ってみる。
ポキッという予想外の感触に驚き、アミタケの断面をまじまじと観察してみた。
ふと、父に睨まれているのを感じ取った私は、ポキポキとアミタケを無心で採り続けました。
「このくらいあれば十分だろう。」
立ち上がり、背伸びをしながら父が言います。
私も立ち上がり、父が持っているカゴに両手いっぱいのアミタケをザッと入れてやりました。
「向こうに栗の木もあるんだよ。ついでに採っていこうぜ。」
そう言って、浩二さんは踏み慣らされた道を進んでいきます。
どうやら、ここまで来たら栗を採るまでがセットのようでした。
少しあきれ気味な父の後ろを付いて行くと
「ギャッ。」
という聞き覚えのある、不気味な鳴き声が聞こえてきました。
「近くに狐がいるみたいだな。」
まだ、あの鳴き声が狐のものだと知らなかった私は、振り子のように頷きました。
少し先では浩二さんが、左右に上体を振りながら周囲を気にしているようでした。
「どうした浩二。狐の声を忘れちまったか?」
父がニヤニヤと揶揄うような表情で浩二さんに近寄ります。
しかし、浩二さんは父に方に振り返ることもなく、まるで何かを探しているような素振りを続けています。
「なあ、さっき赤ん坊の声がしたよな?」
口を半開きにした父が私の方に振り返り、目を合わせると何度も瞬きを繰り返しました。
そして、浩二さんの方へ向きなおすと、
「さっきのは狐の鳴き声だろ。聞き間違えるようなことか?」
父はまた、軽口を叩くように浩二さんに言いました。
すると、また、山のどこかから狐の声が響いてきました。






















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