「あ、ごめん。人違い」
軽い。軽すぎる。
だが、このまま引き下がるわけにはいかない。
「確かに僕は君の時代の人間じゃない。でも……あなたを想う気持ちは本物だ」
大真面目に言った。
彼女は少しだけ目を細め、そして——
「ゴリラ顔の青年くん。面白いのは顔だけにしときなよ」
そう言って、ふっと消えた。
しばらく立ち尽くしたあと、僕はため息をついた。
「……。明日から勉強するか」
同級生たちが木の影に隠れていて、茶化しとも同情とも捉えられる苦笑いが漏れた。
僕は気づかないフリをして帰ろうとしたとき、背後でサラサラと柳が揺れた。
風は、吹いていなかった。
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