国民の7割が1日1.9ドル以下で生活しているとも言われている国で、12歳の少年の稼ぎとして10ドルは決して少ない額ではなかった。
「おっ、テオ、いいモンかぶってんじゃん、好きだね~」
サッカーアニメが描かれたテオの帽子をいじる朽屋。
「オリベル(翼)とベンジー(若林)だってば、知らないのシスター」
朽屋とテオの出会いもこの教会だった。最初に朽屋が信者の方々に「日本人です」と自己紹介したことから、そこにいたテオが大好きなアニメの話を振り、子供好きだった朽屋の気さくさもあってすっかり打ち解けた仲になっていた。
ここベネズエラではC国人はそれほど珍しくもないのだが、アニメの話ができる日本人の数はそれに比べると非常に少なく、テオにとっては希少な存在だった。
「ねぇ、シスター・ルコ・・・ハポン(日本)に帰らないでさ、ずっとベネズエラにいなよ!」
「ハハハ、シスターは修行の身だからね、そのうち帰っちゃうんだよ。日本はいいぞ~。おもしろいアニメがいっぱいあって。逆にテオが日本に来るってのはどう?」
「ハポンには行きたいけど~~・・・OKわかったよ、シスター。またね、チャオ!!」
テオが走り去っていく。
テオと入れ替わるように一人の中年男が入ってくる。やや小太りの浅黒い肌の男で、身なりも粗末でいかにも地元民という風体だが、実は米海兵隊所属の特殊部隊 狙撃小隊隊長のミゲル1等軍曹だ。プエルトリコ出身の彼はベネズエラでの活動も容易なため、地元に溶け込み、朽屋のサポート兼スポッター(観測手)として行動を共にしている。
「シスター・・・CIAからの情報だ」と、ミゲル隊長。
朽屋は先ほどテオが置いていった花を飾りながら耳を傾けていた。
「マドゥロは月に一度、少数の警護隊だけを引き連れて、エル・アビラ山の立ち入り禁止区域にはいっている。・・・それが10月以降、米軍の活動が活発になるに連れて頻度があがっているそうだ。CIAはそこに何かあると睨んで山中に入り込んでいる」
「ドローンとか飛ばさないの?」
なにげなく聞く朽屋。
「マドゥロを狙ったり監視しようとするドローンはことごとく落とされる。原因は不明だ。それ以来CIAではドローン戦術をとっていない」
「あぁ・・そうか。そういえばマザーが言ってたな」
「誰だって?」
「あぁ、気にしないで。この作戦を指揮してる上の上のずーーーっと上の人の話よ」
・・・・・・・・・・・・
マザー・エレノアの話では、2018年8月4日、カラカスで行われた国家警備隊創立記念式典の最中に、演説するマドゥロ大統領を2機のドローン(DJI M600)が襲撃する事件があったという。当時最新の大型ドローンであり、爆発物を積んでマドゥロを直接狙う計画だった。
が、1機は空中で爆発、1機は隣接する建物に突っ込んで炎上した。
この騒ぎで兵士7名が負傷したものの、当のマドゥロはかすり傷ひとつ追わず演台にとどまっており、一瞬驚いた表情を見せながらも、そのまま演説を強行しようとしていた。
さすがに側近たちがそれを止め、マドゥロはしぶしぶ演台を降りた。
後日、MNSF(フランネルの兵士=つまりTシャツを着た兵士、民衆の中の兵士という意味)
と名乗る反体制派グループが犯行声明を出し、6名が逮捕される事件に発展していた。
もちろん、バックにはCIAの支援があったのだが・・・この時からCIAではドローンがどのようにして撃墜されたのか確認がとれず、その後も偵察用のドローン等が次々と落とされる事態となり、マドゥロ周辺には未知の兵器があるとして、極秘調査の対象となっていた。

























Manaです。自分で書いてて一番楽しい、朽屋瑠子シリーズ。今回は今年初めに大事件の起こったベネズエラを舞台に、朽屋の活躍を描いたものなります。少年と絡むことで、オネショタ好きな界隈には受けたかもしれないですね。途中から登場のミゲル隊長は自分の中ではランバ・ラルのイメージです。
ところで、自分的に一番ショックだったのが、これを書いてる最中にアメリカがイランを攻撃しちやって大変なことに・・・せっかく最新の戦場を描こうとしたのに、もう古くなってしまいました。
現実の方が物語より早いし、そんなシナリオ描けません。
まさかトランプさん、エプスタインとかから目をそらしたくてこんなことしてんじゃないでしょうね~なんて思ったり。
一応物語はフィクションということで、お楽しみいただければと思います。
・・・それでは、チャオ。