まるで大統領が最初からこれを狙ってダン・ケインを復職させたかのような口ぶりだ。
だが、あの大統領にそんな細かい知恵はない。おそらく取り巻きの差し金だろう。
「あのぅ~」朽屋が訪ねる。
「これだけの作戦が動いていて、空爆も始まっていて、大統領を逮捕するだけとなれば、私は一体何と戦うためにここに呼ばれたんでしょうか?・・・必要ありますか?」
マザーが答える。
「マドゥロは、悪魔と契約して自身と国を守っているわ。その排除に、あなたの力が必要よ」
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【 ベネズエラの少年 】
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「それにしてもへったくそな絵だなぁ~」
朽屋は壁に描かれた極彩色のキリストのモザイク画を眺めていた。
キリスト教も南へ行くほどラテンのノリが強くなっていく。
2025年11月
朽屋はベネズエラのカラカスに潜伏して、すでに3週間近くが経とうとしていた。
南米独特の蒸し暑い雨季も終わり、ようやく過ごしやすい季節になっていた。
カラカスは5つの市によって構成された地区であり、カラカス市という行政都市はない。
東西に延びたカラカス盆地に沿って、市街地も東西に延びており、その膨張する人口を収容するため周辺の山の斜面には、山頂近くまで住宅街が形成されていた。
1989年には山々のスラム街に住む住人による暴動(カラカス暴動)が発生し、軍による鎮圧で700人もの死傷者が出たという。この蜂起にショックを受けたチャベス中佐がクーデターを起こし、失敗するも国民に強く支持され、のちに大統領となって行く。
そのチャベスの盟友として常に一緒にいたのがマドゥロであった。彼は2013年にチャベスが病で亡くなるや新大統領に選出され、やがて強権を発動して独裁色を強めていく。
現在、朽屋はこのカラカスの中でも歴史ある由緒正しいカトリック教会に修道女として潜伏していた。運の良いことに朽屋はカトリック系の高校に通っていた経歴があり、また世界中のカトリック教会と繋がりのある法王騎士団の後ろ盾もあるため、朽屋にとって教会は身を隠すのには最適な場所となっていた。またベネズエラではカトリック教会への市民の信頼が厚く、軍や警察もおいそれと手出しできない存在でもあった。
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「シスター! シスター・ルコ!! ヘイ!!」
教会の外から朽屋を呼ぶ元気な子供の声がする。
「よぉ、テオ! また来たのかい」
「山できれいな花を見つけたからさ、教会で買ってくれないかな? 果物もあるよ!」
そう言ってテオ少年はサポテやモラ、パルチータなどの果物や、山で摘んできた色とりどりの花の入った籠を朽屋に見せた。
「じゃあ10ドル分、お願いすっかな」
「えっ!そんなに?? しかも米ドルなんだ! ありがてぇ~!」
大喜びで籠の中身を全部教会に持ち込むテオ。























Manaです。自分で書いてて一番楽しい、朽屋瑠子シリーズ。今回は今年初めに大事件の起こったベネズエラを舞台に、朽屋の活躍を描いたものなります。少年と絡むことで、オネショタ好きな界隈には受けたかもしれないですね。途中から登場のミゲル隊長は自分の中ではランバ・ラルのイメージです。
ところで、自分的に一番ショックだったのが、これを書いてる最中にアメリカがイランを攻撃しちやって大変なことに・・・せっかく最新の戦場を描こうとしたのに、もう古くなってしまいました。
現実の方が物語より早いし、そんなシナリオ描けません。
まさかトランプさん、エプスタインとかから目をそらしたくてこんなことしてんじゃないでしょうね~なんて思ったり。
一応物語はフィクションということで、お楽しみいただければと思います。
・・・それでは、チャオ。