日が昇り、ターゲットとなる現場の全体像が樹々の間から見えてくる。
前日にスパイ衛星からの画像をAI解析し、樹冠部の凹凸を精密に測定することで、樹々に埋もれて見えない部分でも人工物によって生じる植生の変化を感知し、要警戒区域として見出すことができる。本来ならばそこへCIA職員を派遣して実際の現場を調査するのだが、今回はマザー・エレノアがリモート・ビューイングにて現場を特定した。
その現場が日を浴びて姿を見せ始める。
樹々の合間を抜け、朽屋たちの場所からならよく見える。
山肌を深く削り、まるで石造りのステージのような雰囲気。後方にはいくつかの石像が並び、真ん中にはヘビの頭をした人物の石像がある。コウモリのような羽も見える。
どう見てもこれは邪神像だ。ステージの真ん中にはやはり石でできたテーブルと、もうひとつ、人が仰向けに寝そべって上体を起こしたような石造りのテーブルのようなものもあった。
「あれはチャクモールだ」とリゲル隊長。
「チャクモール?」
「そうだ。南米古代文明の中で、神に生贄の心臓を捧げるために使われた遺物だ」
「ここはつまり、邪神に生贄を捧げる場であり、マドゥロはその力を宿している・・・というわけか。ワタシのターゲットは間違いなくここにいるみたいね」
石造りのステージの周りに神官と思しき人物が数人現れ、かがり火が灯されていく。まるで野外コンサートの準備でもしているかのようだ。
しばらくしてぞろぞろと人が集まりだした。マドゥロの警護隊の一隊が会場づくりと歩哨に立った。
「もうすぐマドゥロが来るってことか・・・本当にマドゥロを射殺しなくていいんだな?」
と確認するミゲル隊長。
「えぇ。ターゲットはそこじゃあない。あと、今撃ってもたぶん弾ははじかれますよ」
スコープをのぞきながら答える朽屋。
・・・それから1時間。
「来た、マドゥロだ!」
マドゥロ一行も徒歩で参陣してきた。おそらく車列での移動は途中までで、
ここへたどり着くには徒歩でなければならないのだろう。
それだけこの場所へ誰も近づけたくないということだ。
・・・・・・・・・・・・
マドゥロは辟易していた。
ここまでケモノ道のような道を歩いてくるのもそろそろ体がこたえるし、
来れば来たで屋外の仮設テントに仮設の椅子。目の前には古代の遺物のようなオドロオドロしい舞台。そこをまるで今ジャングルの奥地から出てきたような姿の神官たちが竹で出来た楽器を奏でなり、謎の呪文を唱えながら踊ったり、まったくナンセンスだった。
出来の悪い演劇でも見ているかのような気分だ。
さらに胃がムカムカしてくるのは、これから生きた動物を神官たちが黒曜石のナイフで殺し、心臓をえぐりだして神に捧げる儀式を行うのだ。とても見ていられない。
だが、そのおかげで何物にも代えがたい神のご加護が得られるのだ。致し方ない。
























Manaです。自分で書いてて一番楽しい、朽屋瑠子シリーズ。今回は今年初めに大事件の起こったベネズエラを舞台に、朽屋の活躍を描いたものなります。少年と絡むことで、オネショタ好きな界隈には受けたかもしれないですね。途中から登場のミゲル隊長は自分の中ではランバ・ラルのイメージです。
ところで、自分的に一番ショックだったのが、これを書いてる最中にアメリカがイランを攻撃しちやって大変なことに・・・せっかく最新の戦場を描こうとしたのに、もう古くなってしまいました。
現実の方が物語より早いし、そんなシナリオ描けません。
まさかトランプさん、エプスタインとかから目をそらしたくてこんなことしてんじゃないでしょうね~なんて思ったり。
一応物語はフィクションということで、お楽しみいただければと思います。
・・・それでは、チャオ。