神は本来であれば人間の子供の心臓を捧げよと告げていたが、これまでもずっと動物の心臓を使ってきたし、それでもご加護はあった。神は慈悲深いものなのだ。
・・・マドゥロはそう思っていた。
そう思っていたから、ステージ上に木に縛られた子供が連れてこられた時には唖然とした。
・・・・・・・・・・・・
スコープを覗いていた朽屋の手が震えだす。
ここまで儀式の様子をうかがっていたが、ステージの上に人間の子供が出てきたのだ。
子供の頭から見覚えのあるデザインの帽子が落ちた・・・。
オリベル(翼)とベンジー(若林)・・・テオのかぶっていた帽子だ。
「・・・ミゲル隊長・・・見て、テオだ・・・テオがあそこにいる・・・」
「なんだって? あの、よく教会に来ていた小僧か? なぜこんなところに!!」
いったんスコープを外して自分の手を見る朽屋。
「・・・ダ、ダメだ隊長・・・動揺してうまく狙撃できない・・・」
朽屋は以前にも一度、得意な狙撃でミスをしたことがある。
3年ほど前に、日本国内でまるで化け猫のような魔獣と戦った際、オトリとして使った子猫が魔獣に食われてしまい。その動揺で一撃必中だったはずの狙撃を失敗したことがある。
「落ち着け、それでも貴様マリーンレイダースの一員か!」喝を入れる隊長。
「ハ、ハイ・・・」だが朽屋の目には明らかな動揺が見られた。
「ちょっと待っていろ」そう言って持ち場を離れどこかへ行くミゲル隊長。
しばらくしてから、手になにかの植物の葉を山盛りに持ってきた。
「落ち着け。この葉を口に含んで、よく噛め」
そう言ってミゲル隊長は自分も葉っぱを噛んで見せた。
しばらく噛んだかと思うと、ペッと吐き出した。
「ガムの要領で噛んで、あとは吐き出せ」
そう言って葉っぱを朽屋のクチに押し込んだ。
「ああうぅう」もがきながら隊長の言う通り葉っぱを噛む朽屋。
口の中に青臭い植物のにおいと少し酸っぱいような味が広がる。
「このエル・アビラ山は聖なる山として親しまれている山だ。そこに生えるこのアビラ・セレナの葉は、山の女神アナヤの涙から生まれた植物で、山の息吹とも呼ばれている。口に含むことで心を静め、精神を研ぎ澄ませるともいわれている。・・・よし、吐き出せ」
朽屋は噛んだ葉を吐き出した。それから一息深呼吸した。

























Manaです。自分で書いてて一番楽しい、朽屋瑠子シリーズ。今回は今年初めに大事件の起こったベネズエラを舞台に、朽屋の活躍を描いたものなります。少年と絡むことで、オネショタ好きな界隈には受けたかもしれないですね。途中から登場のミゲル隊長は自分の中ではランバ・ラルのイメージです。
ところで、自分的に一番ショックだったのが、これを書いてる最中にアメリカがイランを攻撃しちやって大変なことに・・・せっかく最新の戦場を描こうとしたのに、もう古くなってしまいました。
現実の方が物語より早いし、そんなシナリオ描けません。
まさかトランプさん、エプスタインとかから目をそらしたくてこんなことしてんじゃないでしょうね~なんて思ったり。
一応物語はフィクションということで、お楽しみいただければと思います。
・・・それでは、チャオ。