証言者:佐藤健一(仮名)、34歳、商社勤務
場所:東海道新幹線のぞみ2xx号、11号車2番D席
面談日時:2026年1月18日、午後3時、東京駅構内カフェ
佐藤は、スーツを着た、普通のサラリーマンだった。結婚している。子どもが二人。まったく、「霊感」とは縁のないタイプに見えた。
しかし、彼がコーヒーカップを持つ手は、わずかに震えていた。
「2025年3月14日、金曜日です。大阪出張からの帰り。のぞみ2xx号、午後7時26分東京着の便。」
「私、11号車2番D席——窓側です。隣、E席は空席でした。金曜の夜なのに、車内は結構空いてて。」
「新大阪を出発して、30分くらい経った頃です。京都過ぎたあたり。もう暗くなってて。」
「隣の席——E席に、誰かが座ったんです。」
「おかしいな、と思いました。だって、新大阪で乗ったのは私だけだったし、途中の駅——京都——でも誰も乗ってこなかった。でも、確かに、隣に人がいる。」
「チラッと見たんです。」
(彼の声が低くなる)
「サラリーマン。40代くらい。スーツ。普通です。ただ——顔色が、ものすごく悪かった。青白いっていうか、灰色っていうか。」
「『体調悪いのかな』って思いました。それで、気を使って、あまり見ないようにしました。」
「名古屋を過ぎました。午後8時過ぎ。車内は暗い。みんな寝てるか、スマホ見てるか。」
「そのとき——隣の男が、喋ったんです。」
「『すみません』って。」
「私、『はい?』って振り向きました。」
「そしたら——その男、こう言ったんです。」
「『私、どこで降りればいいんでしょうか』」
(佐藤は、コーヒーを一口飲んだ。手の震えが増していた。)
「変な質問だな、と思いました。『切符見れば分かるじゃないですか』って言おうとして——でも、その前に、何か変だって気づいたんです。」
「その男の目。焦点が合ってない。私を見てるんだけど、見てない。」
「それで、なんとなく——怖くなって。『車掌さんに聞いてください』って言いました。」
「男は、黙りました。また前を向きました。」
「私も、もう関わりたくなくて、スマホを見てました。でも——頭の隅で、ずっと気になってて。」
「それで——我慢できなくて、もう一度、隣をチラッと見たんです。」
「男は、まだ座ってました。でも——」
(彼の声が、ほとんど囁きになる)
「濡れてたんです。全身。髪も、スーツも、びしょびしょに。座席に、水が滴ってて。」




























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