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不思議体験

ゴンゾウさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

新幹線・東京-新大阪間、2025年3月
短編 2026/03/02 18:28 117view

「私、『え?』って声が出ました。だって、雨降ってないし、トイレから戻ってきたわけでもないし。」

「そしたら、男が——ゆっくりと、私の方を向いて。」

「こう言ったんです。」

「『私、多分——もう死んでると思うんです』」

(10秒の沈黙)

「私、何も言えませんでした。ただ、固まって。」

「男は続けました。『新大阪で乗ったんです。でも、着く前に——川に、落ちたような気がして』」

「私、『意味が分からないです』って言いました。」

「そしたら男、こう言ったんです。『私も分からないんです。でも、気づいたら、ここに座ってて。みんな、私が見えてないみたいで』」

「私、『見えてますよ』って言いました。馬鹿みたいに。」

「男は、初めて——笑ったんです。悲しそうに。『そうですか。よかった』って。」

「それから、男は前を向きました。そして——」

(佐藤は、カップを置いた。手が震えすぎて、持てなくなったのだ。)

「消えたんです。一瞬で。座席は、乾いてました。水の痕跡も、何もない。」

「私、車掌さんを呼びました。『今、隣に人がいたんです』って。でも、車掌さん、『このE席は、新大阪から東京まで、ずっと空席です』って。予約記録を見せてくれました。」

「私、狂ったのかと思いました。でも——」

「翌日、ニュース見たんです。3月14日、午後7時40分頃——京都-名古屋間で、線路脇の川に、男性の遺体が発見されたって。40代のサラリーマン。スーツ着たまま。」

「死因は溺死。推定死亡時刻は——午後7時半から8時の間。」

「それ、のぞみ2xx号が、ちょうどその区間を通過してた時間なんです。」

私は後日、そのニュースを確認した。2025年3月15日の地方紙に、小さな記事があった。佐藤の証言と一致していた。
死亡した男性の名前は公表されていない。しかし、彼は今も——どこかの新幹線で、「どこで降りればいいのか」と尋ね続けているのかもしれない。

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