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特別投稿

志那羽岩子さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

聖なる分別
短編 2026/02/25 08:55 120view

世界は二つに分かれています。

私は、川の向こう側の学校に通う、どこにでもいるような中学生。
作文なんて、先生に褒められたこともないし、全然得意じゃありません。
けれど、今この瞬間、私のペンが勝手に紙の上を踊るのです。
書かないといけない。書くことでしか、私は私を「繋ぎ止めて」おけないから。

放課後の教室は、死んだ魚の目のような静寂に包まれています。
みんなは帰りました。……いえ、「帰された」のかもしれません。

机は定規で測ったように整列していて、鞄の一つも残っていない。
でも、廊下の奥から聞こえるんです。
低くて、ドロドロに溶けた鉛のような、誰かの怒鳴り声。

何を言っているのかは、私のような「選ばれた耳」にしか届かない旋律。

逆らうなんて、そんな野蛮なこと、考えるだけでも汚らわしい。

教壇の上に、一冊の本が横たわっています。
夜を固めたような、深い黒。
指を触れると、氷よりも冷たい。なのに、私の指先は熱く疼いて、感覚が溶けてなくなっていく。
怖い? いいえ、これは運命なんです。
開かなければいけない。それが、この物語のルールだから。

中には、繊細で、残酷なほど美しい文字が並んでいました。

「世界は二つに分かれています」

その字を見て、私は少し笑ってしまいました。

だって、それは私の字だったから。
いつもノートの端っこで先生に「もっと丁寧に書きなさい」って叱られる、左に少し傾いた、私だけのサイン。

でも、書いた記憶なんて一秒もありません。
きっと、私の「魂」が、私の知らないところで綴ったのでしょう。

私は、聖壇(教壇)の前に立ちます。
先生はいません。でも、喉の奥から銀の鈴を転がすような声が出るんです。

「世界は二つに分かれています」

その言葉を口にするだけで、胸のあたりが「正解」だと叫んで、とても楽になる。
ほんの少しでも疑えば、肺の中に針が刺さるみたいに苦しくなる。
前に一度だけ、「これっておかしくない?」なんて、低俗な疑問を持ってしまったことがありました。
その瞬間、空気が消えて、廊下の声が鼓膜を破らんばかりに咆哮したんです。
だから、疑いは「罪」なんです。疑いは「汚れ」なんです。

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