俺は出来るだけ平静を装いながら尋ねた。
「厄介なのか?」
彼は静かに頷くと続ける。
「ああ、、かなりな、、
医師に言われたのは、、
大事な人がいるのなら今のうちに会っておきなさいと、、」
そこまで言うと篠原はひとしきり咳き込むと、右手の窓側に視線を反らした。
窓から覗く大ぶりの木には数十羽の鳩がとまり、うるさいくらいに鳴いている。
どうやら病院の隣には神社があるようだ。
すると篠原は「なあ、あそこに三羽鳩がいるだろう」と言うと、窓の外を指差す。
俺はその方に視線をやった。
一本の木の枝に確かに鳩が三羽とまっているのが見える。
「あの右端にとまっている胸の黒い一羽。
あれは俺の母だ」
あまりに意味不明な言葉に「どういう意味だ?」と尋ねた。
彼は続ける。
「ちょうど一週間前のことなんだけどな、
寝付けずに悶々としていると窓から鈴の音がしたんだ。
なんだろうとカーテンを開くと胸の黒い鳩がいてな、紐付きの鈴を咥えてたんだ。
不審に思いながら窓を開けたら、さんの上に乗っかかり鈴を床に落とすと、どこかに飛んでいった」
「それはまた不思議な話だな。
でもなんでそいつがお前の母親だというんだ?」
すると篠原は傍らのテーブルの引き出しを開け一個の鈴を取り出すと、手のひらに乗せた。
胡桃ほどの大きさで細かい細工の施されたその鈴には、赤い紐が結ばれている。
「これは去年亡くなった母のものだ。
うちは母子家庭だった。
小学生の頃一緒に初詣に行った時、俺は貯めた小遣いで母に魔除けの鈴を買ってあげたんだ。
母はすごく喜んでくれて、以来大事にしていた。」




























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