「なんかぁ、お前、こんなもの飲んでんのか。お前、いつの間に、あいつらと同じになった!。」
いつの間にか、俺の傍らに立っていた父の怒声が響き渡る。
「そ、そんなことより。な、なんで。じいちゃんが、「あれ」になっちまってんだよ。
父と母は、絶句し、その場に硬直したかと思うと、ブルブルブルと激しく身を震わせた。
「おまえ。おまえ。いつの間に。うぐぐぐぐぐうぐぐ。」
「仕方ないよう。この子は、もう、元には戻らんよ。・・・諦めよ。」
母は、眼のふちを赤くしていた。
「いいか、私達ことは忘れてな。今までごめんな。もう、あんたは、漂流者(ながれもの)ではないから。安心してな。」
突然、家中の灯りが消え、漆黒の闇の中から、母のすすり泣く声と、父の苦渋に満ちたうなり声が聞こえてきた。人とも獣ともつかない、時に風の通り過ぎるような音がまとわりつく。俺は、耳をふさぎ、目を瞑り、身じろぎもせず、やりすごすことにした。祖父が、そうしろと言っているような気がした。
やがて、板戸の隙間から、かすかな光が差し始めると、俺は、早々に、この限界集落を後にした。今思い返しても不思議なのだが。電車もバスも、とっくの昔に廃線になっていた。地図にも載っていない集落に、俺はどうやって行けたのだろう。
いずれにせよ、俺のふるさとは、もうどこにもない。ただ、ラムネの瓶から取り出したガラス玉と、あの日見た祖父の亡骸(あれ)だけは、未だに目に焼き付いて離れない。



























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