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ヒトコワ

沈丁花さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

爽やかな人、その仮面の下は
長編 2025/12/26 13:43 296view

 

 

 

 ところが、Pはそれでは懲りなかった。やって来る頻度は確かに減ったが、一週間に2回は俺の部屋に泊まりに来た。
 そのうち、彼は時々おかしなことを口走るようになった。
「オレ、実はマケドニア王アレクサンドロス3世の生まれ変わりなんさ。それから転生を繰り返して、1881年にローマ教皇ヨハネ23世として生まれたんだ。だから、オレには世界の王だけが持つ霊力があるんだ。」
と自慢された時には、流石に俺も驚いた。 

 因みに、俺の最初の転生はアレクサンドロス大王の実妹クレオパトラであり、その後も俺はPの兄弟や親友として生まれ変わりを繰り返してきたと告げられた。平たく言えば、Pと俺は過去世からとても親しい間柄にあるというのだ。

 

 

 また、Pは俺の部屋でよくお化けの話をして俺を怖がらせた。
「このアパート、霊の集会所になってるねえ。戦国時代に哀しい死に方をした小さな女の子がさ、地縛霊になってて、他の霊たちをここに呼んでんだわ。その地縛霊の遺骨がまだこの建物の下にあるから、タチが悪いんだ。このままここに住んどったら、間違いなくきみも呪われるよ。」
というふうに。

 また、休日の朝に、
「〇〇ちゃん(俺)、これから2週間ぐらいは交差点では気を付けなよ。昨日の夜からきみのお顔の右半分にさ、青白いものがかかってんだわ。それ、交通事故に遭うかもしれないってサインだから。」
などと、不快なことをよく言われた。

 また、俺の部屋の空気清浄機が強く動いただけなのに、Pは露骨に顔をしかめて大変おびえた。
「ちょっと、あれ見てよ!空気清浄機が霊を吸い込んでるよ!」

 

 

  Pの幽霊の話は怖かったが、俺だってもう子供じゃないから聞き流していた。俺の部屋が霊の手形だらけであるならば、他の部屋も同じようになっているだろう。また、他の入居者さんやアパートの管理会社や修理業者さんも、俺と同じように呪われていることになる。ただ、交通事故には気を付けて出勤し、帰宅するようにしていた。

 

 

 ここで皆さんの中にはPは友達ではなく、ただのフレネミーだと思われた方もいらっしゃだろう。実際に、俺もPがかつての敵だったX(第9作・『積もり積もった痛みの果てに』に登場する女の子)によく似ていると感じていた。だが、Pは身体的な力が強い分、Xよりももっと厄介だった。

 

 
 

 4月のある日、Pは仕事で気に入らないことがあったらしく、夜20時ぐらいにタクシーで勝手に俺の部屋にやって来た。奴はわけの分からないことで5時間以上わめいた挙句、俺を口汚く罵った。その際に、彼は俺の部屋の壁を力いっぱい殴った。壁は幸い無事だったが、この暴挙にはいい加減に俺も腹が立った。

 俺が「ここは俺の部屋だ、出ていけ!」と怒鳴ると、Pはなんと【台所の包丁を勝手に取り出し】、【刀身を天井に向けた】。そして、俺に不敵な笑みを見せ、
【これで明日Tのやつ(Pと同じ営業所にいる社員さん)を殺してやるんだ!】
と、普段よりも高らかな声で言った。

2/6
コメント(1)
  • 花蘇芳(沈丁花)です。【本当に恐ろしいのは(最終章)】と副題を設けましたが、短編はもう少し続きます。

    2025/12/26/13:48

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