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ヒトコワ

沈丁花さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

爽やかな人、その仮面の下は
長編 2025/12/26 13:43 340view

【副題;本当に恐ろしいのは(最終章)】

 

 

 胸糞注意、DVの描写あり

 この話は俺が20代半ばの頃に本当にあった話です。命の危険を感じるくらい、怖い体験でした。身バレを防ぐため、多少フェイクが入っています。

 

 

 俺がN市の会社の営業担当として入った時、先輩社員の一人にPという男性がいた。彼もまだ入社してから一年も経っていなかったが、商品知識はしっかりしており、弁舌滑らかで朗らかなところに俺は好感を持った。また、彼は俺よりも14歳年上だったが、未婚だった為か、肌も髪も艶やかで年齢よりもずっと若く見えた。

 やがて研修期間が終わり、俺は同じN市内の別の営業所に配属されるようにことになった。Pと俺は会社の飲み会で再会し、プライベートでも友人としてお付き合いをするようになった。

 

 

 Pは実家でご家族と暮らしていた。彼は契約社員であり、お父さんが彼に厳しかったようだった。
 Pは週に4回出勤していたが、お休みの曜日は、隣のK市の公的機関で経理のような仕事をしているらしかった。Pしか出来ない難しい計算をする仕事で、彼の都合のいい日時に自由に出勤すればいいと言う。
 世間知らずだった俺は、
(Pさん、確かに数字に強いもんなあ。ヘンな勤務体系だけど、そういった仕事もあるのかもなあ。)
と、鵜吞みにしてしまった。
 ある時、Pは親と大喧嘩をしたと言って、半べそをかきながら突然俺の部屋にやって来た。その時は二人で飲みに行き、ふてくされるPを慰めてあげたが、それを機に彼が約束もなしに来訪してくることが増えた。そして、それを受け入れてしまったことが大きな間違いにつながった。

 

 Pは家から40分近くかけて、バスで通勤していた。一方、俺のアパートは駅からも比較的近く、Pの営業所から歩いて20分くらいのところにあった。

 
 

 蜜月はまたたく間に過ぎ、俺はだんだん彼のだらしなさや厚かましさに疲れ始めた。
 勝手な時間に俺のアパートにやって来る、部屋の暖房を30度まで上げる、夕飯まで俺に作らせる。もちろん、Pは自分の分の光熱費や食費を俺に渡すことなどしなかった。おまけに、いつも手ぶらでやって来た。あまつさえ合鍵をくれだの、俺の実家から車を持ってきてほしいだの、とんでもないお願いを何度もされた。だが、たとえどんなに頼まれても、俺は上記の二つとガスの使用権だけは絶対に許さなかった。

 

 

 ある時、俺は意を決してPに思いの丈を話した。
「俺だって一人の時間がほしい。あなたがしょっちゅう泊まりに来るから、光熱費も食費も前の1.5倍になっているんだ。この部屋は単身用だから、下手すりゃ俺が『賃貸契約違反』にされてしまう。あなたには、K市の公的機関で計算をする仕事もあるんでしょう?多分、そちらの仕事が溜まっているだろうから、俺のことよりも仕事の方を優先してほしい。」

 そしたらPは恥ずかしくなったようで、その日はそそくさと家に帰っていった。
 一応補記しておくが、神に誓ってPと俺は同性愛の関係ではない。

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コメント(1)
  • 花蘇芳(沈丁花)です。【本当に恐ろしいのは(最終章)】と副題を設けましたが、短編はもう少し続きます。

    2025/12/26/13:48

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