「刑事さん、世の中には知らない方がいいこともあるんですよ」
「はぁ? お前何を言って、」
私がその男につかみかかろうと立ち上がった瞬間、
おーい
小学生くらいの男の子だろうか。誰かに呼びかけるような声が窓の外から聞こえてきた。
「ほら言わんこっちゃない」
「誰だ!」
私はすぐさまブラインドを指で下げて、窓の下を覗いた。しかし、そこには誰もいない。
「お前、何か仕込んだのか」
「やだなぁちがいますよぅ」
妙に間延びした声でその男は答える。ああ気持ち悪い。
「調子乗ってんじゃねえぞ!」
今度こそ本当に男の胸倉をつかみ上げた。それなのに、こいつは相変わらずヘラヘラと笑い続けている。本当に気味の悪い奴だ。
「刑事さぁん離してくださいよぉ」
「吐けぇ! お前がやったんだろ!」
「フヘヘヘヘ」
こいつは明らかに異常者だ。なんの罪もない子供を殺しておいて、平然と笑ってやがる。俺がこの手でムショに送ってやらないといけない。
「だいたいな、そのおーいって声が何だってんだ!」
その言葉に、男は徐々に真顔になっていく。
「刑事さん」
「なんだ」
「ほんとうに、ほんとうに知らない方がいいんです」
男は急に声のトーンを落としてそう言った。目の焦点があっていない。その変わりように少したじろいでしまう。
「さっきから何を言っているんだお前は!」
「助けてください、刑事さん」
「だから何を言って、」
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