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不思議体験

fudousanyaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

神の姿
短編 2025/12/01 17:27 973view

日本アルプスに近いある村は、すでにほとんどの住人が老人でしてね。集落のように老人達が

日々お互いの健康を心配しながら暮らしていたんですよ。

この集落に、86歳のお婆さんが一人で暮らしていまして、すでに息子も皆、集落を出て行き

「都会で一緒に暮らさないか」と言われましたが、気楽に一人で畑仕事をしながら暮らす事を

選んでいました。断る理由は、集落の人々の事もありますが、このお婆さんは毎日のように

畑の上にある昔からの社のお参りと時々行う掃除や、その社で独り言のように語らうのが

好きだったからと言う理由もありました。

夏の前の梅雨どき 大きな雨が集落を通過していきました。

川はあふれ、畑に流れ込んだ水は作物を押し流して、山の杉の木も浮き上がり傾いてしまうほど

の災害でした。幸い、集落の老人達の家屋はどこも問題は無く、老人達は助け合い

ながら修理して行ったのです。

ところが、山の畑の上にある社の屋根が大きく傾いてしまい、倒れた木が屋根の上で折れて、

扉まで開かないように塞いでしまったのです。

老人達は社に縄を掛けて少しづつ引いて傾きを直しましたが扉は割れてしまい。開いたまま

「困ったな」「修理しようにもいくら掛かるのか」と諦めてそのままほっておく事も考えました

が、お婆さんがこの社をだいじに守ってきたことを思うと、なんとか修理をしたい。

そこで集落を降りた街の役所に相談すると、街から少し離れた村に宮大工がいることを教えて

もらいました。

この宮大工と言うのが実は昔からこの地方に居た人では無くて、まだ若く山陰の方から越して来

た人だと教わり、「お金もそんなに出せないのに治してもらえるのか」と不安になりましたが

婆さんが自分で直接頼みに行くと言って、付き添いの村人と共に、その宮大工がいる村まで

行ってみたのです。

宮大工の若者は訪ねて来たお婆さんたちの話を聞くと簡単に「治します」と言い

お金もあんまり沢山払えない。と言うと「大丈夫です。木を切らしてください」と笑顔さえ

見せてお金は要らないと言います。

「ありがたい」と集落に戻るとお婆さんは皆に報告して村人は全員大喜びでした。

宮大工の若者は二日後には集落にやってきて、傾いた社を一目見るとあてがわれた空き家に泊まり

込んで図面を作り、山から木を伐り出して社の建て替えを始めます。

お婆さんはその宮大工の食事や手伝いをしていきました。

折れて屋根に刺さった木を取り除き、新しい扉を作っている宮大工はお婆さんが休憩の時に

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