それからの記憶は曖昧です。
気づけば、自宅に戻っていました。
ザックの中には、濡れた赤い布が入っていました。
あの時、持っていったはずの“目印のリボン”に似ていましたが――
ねじれていて、鏡のような反射がありました。
もうすぐ、三年になります。
最近、鏡を見るのが苦手です。
自分の動きが、ほんの少しだけ、遅れて見えるような気がするからです。
それと、左の目の下に、小さな水疱のようなものができました。
押すと、冷たい水が出てきます。
医者に見せましたが、「異常なし」と言われました。
でも、鏡の中の私は、笑っていませんでした。
それ以来、部屋のすべての鏡を布で覆いました。
ただ、夜中になると、その布が外れていることがあるのです。
私は、もう一度あの森に行くべきなのかもしれません。
“本物”が、どちらなのかを確かめるために。
※この手記の投稿者に関する照会は得られていない。封筒の差出人欄は白紙であり、本文に記された地名・人物名も、いずれ
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