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呪い・祟り

どこかで見た話さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

鏡面森
短編 2025/11/29 12:48 934view

細長く、まるで人の“目の形”のように湾曲した破片。
泥の中から拾い上げて、ライトで照らすと、自分の顔が映りました。
でも……少し、違って見えたのです。
左右が、逆だったのかもしれません。

「落としただけだろう」とSさんは言いました。
けれどその時、彼の足元にも、同じような鏡片がついていたのを、私は見逃しませんでした。

翌週、社内に報告書を提出しました。
とくに問題はなく、調査は「正常に完了」と記載されました。

でも、Sさんはその日から会社に来なくなりました。

彼は何も言わず、連絡も取れないまま退職したと聞きました。

私物も持ち帰らず、机の中には一冊のスケッチブックが残されていました。

私はなぜか、その中を見てしまったのです。

中には、風景のスケッチが数枚。
見覚えのある、あの森の風景でした。
ただ、描かれている木々の枝が、すべて“逆さ”に伸びていました。

ページをめくっていくと、最後の一枚に、こう書かれていました。

「水の中では、あっちが“表”になるんだ」

私はこの言葉が忘れられず、もう一度、あの場所を訪ねました。

ひとりで行くのはためらわれましたが、当時の自分には、それを止める力がなかった。

現地には、池がひとつだけありました。

地図には載っていない、小さな池です。
だが水面は異様なまでに滑らかで、風が吹いても揺れません。

私は、そこに自分の姿が映っているのを見て――

息を飲みました。

鏡像だったのです。
反転している。
いや、私が“反転された側”なのかもしれない。

身をかがめて、水面を覗き込みました。
その時、水中の自分が――瞬きをしました。

私は、していないのに。

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関連タグ: #山#病院#記憶#鏡
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