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呪い・祟り

どこかで見た話さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

萱津村
長編 2025/10/11 23:09 4,020view

村の中央に、木製の古い門がひっそりと佇んでいた。

その門がゆっくりと軋みを立てながら開いた。

私は息を呑んだ。

ここは私の記憶ではなかった。
いや、私の記憶ではないはずだった。

けれど、この場に立つと、胸の中に忘れかけた何かがざわめき、震えた。

この村は、ある誰かの記憶。
あるいは、私が知らず知らずに取り込んだ、異界の断片なのかもしれなかった。

私は歩き出した。

村の道は静かで、足音だけが異様に響いた。

ふと気づくと、空は曇り、木々の影が長く伸びていた。

目の端で、またあの異形が見えた。

人の形をしているが、目は空洞、口は動かないのに笑う。

それは、私の内なる何かが形を取ったもののようだった。

私は叫びたかった。
だが声は喉に詰まり、冷たい霧の中に溶けていった。

村の家のひとつに手をかける。

扉はひんやりと冷たく、木の節目からかすかな温もりが漏れていた。

何かが私を呼んでいる。

声ではない。言葉ではない。

記憶の底から響く、引き裂かれた過去の音だった。

私は、もはや戻れぬ道を歩いていることを悟った。

耳の奥に、遠くから歪んだ声が聞こえた。

「かやつ……」

それは私の名前であり、また、私の知らぬ誰かの名前でもあった。
その村で過ごすうちに、私は自分が何者であるのか、どこにいるのかが次第にわからなくなっていった。

朝の光は薄く、木々の間から差し込む霧が村を包み込む。
石畳は苔むし、風が運ぶ土の匂いはどこか遠い記憶の香りを呼び覚ました。

だが、人影は一つも見えない。
声も、足音も、息遣いもない。

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