不倫したのに凝った弁当をむしろ毎日持ってくるようになったことにモヤモヤしていたけれど、そんなこと当然会社で言えるはずもなく。
同じ意見をもったやついたじゃんという喜びでちょっとだけ立ち聞きすることにした。
「私だったらあんな浮気発覚した後、相手の作ったごはんがそもそも食べられない。よく口つけられるよね。毒とか盛られたらとか考えないのかな?」
「考えてたらあんな風に食べれないでしょ」
そんな風に考えたことなんてなかった。
ただ、強烈に恨まれた相手が作るごはん。
調理工程見てないご飯。
いままでそのメニューの豪華さに羨ましいとばかり思っていたけれど。
確かに浮気された立場で考えると、死ねと思ったっておかしくない。
というか、今口にしている物に毒をいつでも奥さんは盛ることができると思うとぞくりとした。
お子さんが生まれる少し前に、たしかA先輩は子供がこれから生まれるってことで、保険プランを見直すから昼は今日は外とか言ってたことがあったっけとかいろんなことが急に思い浮かぶ。
「わかる~今日のメニューみた? グラタン、一度焼いた明太子が混ぜられたポテトサラダ、唐揚げにはかけるようかなマヨネーズの小袋、緑としてサラダ菜が申し訳程度に1枚とか入ってたかな。ご飯は今日はチャーシューがたっぷり入った炒飯だった」
「あれ何カロリーで塩分どれくらいとか考えたこともないんだろうね」
「考えてたら少しだけ手を付けてコンビニでサラダとか買ってたでしょ、弁当であれなら家ならもっとすごいよね」
そういうと部屋のなかでドッと笑いがあった。
弁当であれなら家ではもっとすごいだろう、確かに俺もそう思っていた。
カロリー、塩分……
「指触る動作最近よくするじゃん。だからすでに効果でてると思うよ」
「あっ、こうでしょ」
「そうそうそう! 似てる~」
パンパンパンと笑い声だけじゃく手までたたくほどの大うけが扉一枚隔てた向こうでおこった。
指を触る動作? そう思い返すと、先輩は立って話すとき、ここ最近は指一本一本こうむくみを取るような動きしてるかもって気が付く。
























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