「豪華な弁当だとおもってこれ見よがしに皆に見せびらかすように食べてるけどさ。こっちはシネシネ弁当今日もきたーって笑いそうになる」
「ちょっ、シネシネ弁当とかとんでもない呼び名裏でつけてるじゃん。もう次みたとき絶対今日のシネシネ弁当とか思い出すじゃん。私吹き出すかもしれないんだけど」
シネシネ弁当……
「その通りじゃない? 赤ちゃんいて連日寝不ななかあのメニュー作るんだよ。一品一品死ね、
死ねって思いを込めて作るでしょ」
向こうも酒が回ってるんだろう、さらに下品な笑い声が部屋からかすかに響いた。
「A先輩マイホーム立てるときに団信はいってるんだっけ? それに保険もたしかお子さん生まれるとかで見直ししていいパパきどってたじゃん。あれってどうなんだろうね?」
「このまえ給湯室でYさんSさんもこっそりその話してたもん」
「皆考えること同じじゃん」
そんなこと考えたこともなかった。
酔いは少しさめて、ふいにスマホでついカロリーとか塩分とか先ほど聞き耳を立てた言葉を次々と検索してしまう。
そして思う、あの1食は一体何キロカロリーあって、塩分濃度はどうなっているんだろう? って。
「ぶっちゃけあの容姿だから浮気できたところあったじゃん。これまでもずーっとあの容姿だからよくしてもらったこと多かったと思うし。あれに陰りがでてきたらAさんどうなるんだろうね」
「怖い!?」
俺はB美に見つかる前にさっさと会計を済ませて店を出た。
A上司はまるでむくみが気になるかのように、親指と人差し指で反対の指を1本根元から指先にむけて動かすしぐさをさらによくみるようになった。
そしてお昼になると、豪華な豪華な手の凝った弁当がA上司を食べる。
おおきなエビフライ、カラフルなパプリカのマリネは一度素揚げしてアンチョビが隠し味らしい。



















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