俺が通っているK大学には映画研究会が存在した。映画研究会の主催者であるエーリッヒ・フォン・ヴァレンシュタインは根っからのシネフィルであったという。ヴァレンシュタインは映画研究会のメンバーを集めて、「恐怖のゾンビ看護師」というホラー映画を作ることになった。ヴァレンシュタインは監督、脚本、撮影、特殊メイクなどを担当したのだという。ヴァレンシュタインは撮影したフィルムを編集している時にゾンビ看護師が刑事役の俳優(ヴァレンシュタインの知り合いのゲイポルノ男優)をヌンチャクで殴り殺すシーンがあった。
「俺、こんなシーン撮影したっけな?」
ヴァレンシュタインは頭を抱えたという。次の日、刑事役の俳優が女子トイレの個室で撲殺死体が発見されたのだ。ヴァレンシュタインはまたフイルムを見た。そのシーンはゾンビ看護師が風俗嬢役の女優(ヴァレンシュタインが出会い系サイトで知り合った女性)をヌンチャクで殴り殺す映像であった。
「俺、こんなシーン撮影したっけな?まぁいいや、編集を終えて、録画してあったSF映画「ラジオアクティブ・ドリーム」でも見るか。HAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
次の日、風俗嬢役の女優が女子トイレの個室で撲殺死体として発見されたのだ。流石にここまで大騒ぎになっているのにもかかわらず、ヴァレンシュタインは
「細かい事は気にするなよッ!それにしても昨日見た「ラジオアクティブ・ドリーム」は1980年代のB級映画らしさがあっておもろいな」
の一点張りであった。さて、ヴァレンシュタインは煙草ふかしながら、編集作業を行っていた。映像はどこかの大学のようであった。ヌンチャクを持ったゾンビ看護師は猛スピードで校舎内を走っている。
「俺、こんな映像とった覚えはないぞ」
ヴァレンシュタインは真っ青な顔をする。そして、カメラはヴァレンシュタインの背中で停止した。ヴァレンシュタインは後ろを振り返る。
「!」
そこにはヌンチャクを持ったゾンビ看護師が仁王立ちしていたのだった!
「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
次の日、女子トイレの個室にて、ヴァレンシュタインの撲殺死体が見つかったのである。
「どや!シティボーイな儂が語るナウい怖い話面白かったやろ!HAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
この話をしてくれたこの大学の卒業生(つまり、俺の先輩にあたる方であり、今はNテレビ系列の地方局に勤務している)はドヤ顔で俺に言う。
「あんた。この話を誰から聞いたんだ?まぁ、俺もその映画研究会であった怖い話を知っているわけだが・・・」
「おいおい、儂はこの大学の卒業生やで!実はここだけの話、儂はエーリッヒ・フォン・ヴァレンシュタインが主催する映画研究会と面識があって、その現場をリアルタイムで目撃したんや!」
俺はため息をつく。
俺は先日、Nテレビ系列の地方局でアルバイトしていた。そして、Nテレビの番組「24時間テレビ」のスタッフに参加することになった。言うまでもないがすんごい激務だった。Nテレビ系列の地方局のプロデューサーはちょっとしたことでキレる滅茶苦茶なヤバい奴であった。暴力をふるうどころか女を見れば平気で強姦し、スタッフをタダ働きさせるような奴でもあった。おまけにボランティアの金を平気で着服していたのだ。さて、俺は15分くらい休憩をとることにした。俺は地下の仮眠室で休憩をとった、が、ある事に気付く。仮眠室には先客がいるようであった。
「まぁいいか」
俺はそう思いながら、休憩をとる。そして、地方局での中継放送が開始された。俺やスタッフたちが映像を見て、驚く。映像には仮眠室での首つり死体が写っていたのだ!映像は中継に移り変わった。タレントはマイクで話すときに、タレントの首が突然180度回転した。スタッフたちは悲鳴を上げそうになったが、見て見ぬふりをした。
「おい、大鷹!」
プロデューサーは俺の腹にパンチを叩き込む。俺はうずくまる。プロデューサーは容赦なく、俺の頭上にかかと落としをくらわした。数分後、意識を取り戻した俺はスタッフからある事を聞かされた。
「鷹さん。あの仮眠室でADがプロデューサーのパワハラやタダ働きに耐えかねて、自殺したらしいんだ。それも「24時間テレビ」の放送中にだよ。ADの葬式には闇金業者が取り立てに来ていたんだ。ADはまともに給料も貰っていなかったせいで闇金で金を借りて生活していたらしい」
この話を聞いた俺は地方局のアルバイトをやめる決心が着いた。余談ではあるが、プロデューサーの独断でバイト料は支払われることはなかった。パワハラ糞プロデューサーの態度にブチ切れた俺は地方局にある機材を全部叩き壊して、憂さを晴らしたのだ。
俺はそんな事を思い出しながら、
「なるほどね。実はな。その話、俺はエーリッヒ・フォン・ヴァレンシュタイン本人から直接聞いたんだよ。先輩さん、俺の隣を見てみな。俺は奴さんが語ってくれたんだよ」
俺は隣に指さす。そこには血まみれのエーリッヒ・フォン・ヴァレンシュタインが仁王立ちしていたのであった。
終わり






















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