あの絵と寸分違わぬ狂気に満ちた目で俺の顔を覗き込んでいた。
俺を見ているその間も延々と何かを呟いている。
次の瞬間、そいつは口が裂けそうな程大きく口を開けると俺の右腕へと噛み付いた。
歯が肉へと食い込み、骨が軋む感覚が伝わる。
夢ではないと思えるくらいの激痛に俺は喉が張り裂けんばかりに絶叫する。
そのまま、聞いたことのないような音と共に乱暴に腕が引きちぎられた。
顔を血で染めながらそいつはクチャクチャと俺の腕を咀嚼し、飲み込んだ。
数秒程、瞬きひとつせず俺の顔を見つめたあと、また裂けるほどの大きさで口を開いた。
ゆっくりと、俺の頭へと口が近づいてくる。
抜け出そうにも、大きな手で掴まれた俺の体は微動だにせず、暴れる度に指が食いこんでくる。
そのまま俺の頭がサトゥルヌスの口の中へと入っていく。
血と唾液の匂いが混ざりあってこの世のものとは思えない匂いがした。
気がふれたように叫び声をあげるが、口の中で声が反響するばかりで無情にも首筋にギリキリと歯が食い込んでいく。
そのまま引きちぎられたかと思うと、意識が飛んだ。
…俺は飛び起きた。
心臓は飛び出しそうなほど高鳴り、バケツでもひっくり返したかのように汗をかいていた。
焦るように右腕を確認する。
夢だとわかっているが繋がっていることを確認すると深く息を吐いて安堵した。
それにしてもリアルな夢だった。
あいつの息遣い、痛み、苦しみ、匂い。
まるで本当に自分がサトゥルヌスに食われているような、鮮明な感覚だった。
「あれはただの夢だ」
そう言って自分を納得させて立ち上がると、冷蔵庫を開けて水を飲んだ。
テレビの横に掛けられたサトゥルヌスの絵の顔を見ているとまたあの夢を見そうだったので、壁から外して裏返してからまた眠りについた。
…また夢を見た。
だが今回は何か変だ。
自分じゃない誰かの感情が自分の頭へと流れてくる。
不安、焦燥、怒り、恐怖。
何かに取り憑かれたような感覚。
冷静な自分と隣合わせるようにそんな感情たちが頭の中をぐちゃぐちゃに駆け巡っていく。

























怖
たしかに、ゴヤは寝室に掛けておきたい絵じゃないですねー
オチまで読むと「裏返した絵を再度ちゃんと見てみたら、ただのどうでもいい風景画だった」みたいなことを妄想しちゃいます