それから数日はぼんやりした気分で過ごしていた。
手紙の最後の1文が私の頭の中を渦巻いていた。
岬がいない合唱祭に行って何があるのだろうか。
想像すると、胸に空いた穴に冷たい風が吹き抜けるようだった。
去年、約束を守れなかった後悔がジリジリと身を焦がしていた。
仏間の夫の遺影の前で1人でそんなことを考えていた。
実家はいつもより広く感じた。
あの手紙は誰が届けたのだろうか。
非現実的な想像がもうすぐ目の前の扉を叩いているようだった。
もっといつも岬の側にいればよかった。
夫の遺影は静かに私を見ている。
岬が帰ってきてくれれば何もいらない。
そう願うしかできなかった。
約束の日。
憎らしいほど晴れ渡っていた。
化粧も支度も終わっている。
約束をした人は帰ってきていない。
それでも交わした約束は守るべきなのだろうか?
私は畳の間をうろうろしていた。
ふと仏壇が目に入る。
引き出しが少し開いていた。
誰が開けたのだろう。
ここに触れるのは私か岬しかいない。
近づくとその中に、2枚の「合唱祭の案内」。
1枚には「お母さんへ」、もう1枚には「お父さんへ」と元気な文字で書かれていた。
岬のひたむきさが伝わる。
私宛のプリントをそっと手に取りカバンにしまう。
もう1枚は仏壇の引き出しにしまっておいた。
迷っている間に開演の時刻が迫っていた。
私は家を駆け出した。
自転車に跨り、懐かしい通学路を走った。
蝉の声が急かすように後を追ってくる。
どんなに急いでも開演時間を少し過ぎてしまう。
稲穂の青と灰色の古びた電柱が猛スピードで流れていく。
学校に到着すると錆だらけの自転車を慌ただしく停めた。
そして体育館まで走る。
体育館からは子供達の歌声が聴こえる。
もう始まってしまった。
せめて1曲だけでも聴きたかった。
体育館の扉に手をかけて開ける。
思ったより力が篭ってしまい、バタンと大きな音を立ててしまった。
体育館のすべての視線が私に集まった。
ピアノの伴奏が止まる。
戸惑った生徒の歌声も止むはずだった。
歌い続ける1人の生徒の声だけが体育館に響いていた。
その元気な歌声は、私達のためだけに懸命に歌い続けていた。
それは去年聴くはずだった。
後悔が波のように打ちつける。
温かい水滴が地面を濡らしている。
もし、本当に神様がいるのなら、それはどこまでも気まぐれで、そして残酷だ。
これは、別れの歌なのだと、そう思った。

























随所に差し挟まれる小賢しいレトリックがいちいち鼻につく。
このサイトの読者層には刺さるのかもしれないけど。
ちょっと意味がわからない