お父さんは続けました。
「ですので・・、申し訳ないのですが、この商品、キャンセルするので引き取りに来てもらえませんか」
私は「・・・はい」とだけ答えるのが精一杯でした。
想像妊娠?
もしくは、子供を亡くしたことを認められずに今もまだ子供がいると思い込んでいる?
色々と想像は膨らみましたが、直接は聞けません。
翌日。
私は約束通りそのお宅へ再訪しました。
お母さんが出てきたらどうしようと、内心緊張していました。
どんな顔して挨拶したらよいのか・・
家の前に立ち、意を決してインターフォンを押しましたが、誰も出てきません。
おかしいなと思い、何度も押しますが、やはり人の気配がありません。
試しにドアノブに手をかけてみると、施錠されておらず、ドアがぎぎっと開きました。
都会では信じられないかもしれませんが、当時の田舎では留守でも施錠していない家などざらで、私たちはよくこうしてドアを開けて顔だけ玄関の中に入れて家人に呼びかけていました。
「こんにちは、〇〇です」
呼びかけながら室内に目をやって、私は息をのみました。
もぬけの殻だったのです。
ついこの間まであった家財道具がまるでなくなっていて、完全な空き家になっていたのです。
「え??」
思わず声が出てしまいました。
呆気にとられる私の目の前に、未開封の教材セットだけが、ぽつんと置かれていたのです。
それ以外は家具一つない、完全な空き家でした。





















よかったです
怖い