かれこれ10年前の話です。
当時私は廃墟マニアで、日本全国の廃墟を訪れては写真を撮影し、それをブログなどで公開することを趣味として楽しんでいました。
この日私は、とある廃墟になった学生寮を一人で探索していました。もちろんオカルト目的ではないので、昼の明るい時間帯です。
その学生寮では過去に火災が発生し、2名の学生が亡くなっていました。廃墟になったのもそのせいでした。
焼け跡がそのまま残っている不気味な廃墟で、学生2名が焼死した部屋の入り口には警察の黄色い立ち入り禁止のテープが張られたままになっていました。風で黄色いテープがゆらゆらと揺れていました。
さすがにその部屋には気味が悪いので入らずに、それ以外の部屋や屋上、地下などを探索し、一通り写真に収めていきました。
風が強い日でしたので、探索中はあちこちで扉が閉まる音や揺れる音が聞こえ、正直少し怖かったのを覚えています。
小一時間ほど写真撮影をした私はそろそろ帰ることにしました。
焼けただれた床を踏み抜かないように慎重に歩き、出入口を目指していると、廃墟の外から話し声がすることに気が付きました。
壁にあいた穴の隙間からそっと外を窺うと、高校生ぐらいの女の子が二人、廃墟の前で何か話している姿が見えました。
少し迷いましたが、私は廃墟を出ることにしました。
「きゃああああああ!!」
いきなり廃墟からのっそりと出てきた私を見て、女の子たちは悲鳴を上げました。
幽霊か何かだと思ったのでしょう。それも無理はないのですが。
私は怖がらせないようににこやかに「びっくりさせてごめんね。肝試しに来たの?」と尋ねました。
「は、は、はい、そうです。な、な、何やってるんですか?」
「ああ、俺はこういう廃墟を写真に撮るのが趣味なんだ」
「ええ? こ、怖くないんですか?」
「うん、全然。でもここ肝試しするなら気をつけな。本当に人が死んじゃってるみたいだから」
「ですよね、知ってます。だから今も入ろうかどうしようか相談してたんです」
聞くところによると、彼女たちはこの近所に住む高校生で、今日は学校が休みで暇だったので、地元で噂になっているこの廃墟に肝試しにやって来たのだということでした。
少し話していると彼女たちも落ち着いてきたようでした。
廃墟に入るということでしたので、私は彼女たちを見送りました。
「中に黄色いテープの張ってある部屋があったから、そこには入るのを止めておいたほうがいいと思うよ」
「わかりました。ありがとうございます!」
彼女たちが廃墟に入っていったのを確認し、私はその場で機材を片付け始めました。撮った写真を液晶でざっと確認し、三脚やカメラを鞄に仕舞います。
その間、廃墟の中から彼女たちの嬌声や悲鳴なんかが聞こえていました。
荷物を片付け終え、私は廃墟を仰ぎ見ました。ちょうどあの黄色いテープの張ってあった部屋の窓が見えます。その部屋は二階にあったので、少し見上げる形でした。






















※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。