私はかつて熱狂的な廃墟マニアだった。
休日になれば日本各地の廃墟を巡り、写真を収めて、それをブログで公開することを趣味としていた。
これは私がお気に入りだった某県にある廃醫院を2度目に訪れた時の話。
この廃醫院は明治時代に開院し、昭和初期に閉院となった、かなり古い廃屋だった。
それだけに歴史的価値も高く、私はこの廃醫院に一目ぼれし、一度目に撮れなかったカットがどうしても撮りたくなり、家からかなり遠いにもかかわらず二度目の訪問を決めた。
人里離れた竹林の中にひっそりと残るこの廃屋は、それだけでとても絵になる。
二回目となるこの日も私は夢中で写真を撮っていた。
前回撮れなかったカットの写真撮影に夢中になっていたので、いつ、入り口にその女が立っていたのか、私には分からない。
ふと何かの気配を感じ、私が顔を上げると、一人の女が廃屋の入り口に立って私を見ていた。
「うわっ」
全く予想もしていなかった闖入者に、私は思わず声を出してしまった。
人里離れた竹林の中、その女は全く不釣り合いな恰好をしていた。
三つ編みした黒髪のおさげがふたつ。
黒目がちの目は大きく、肌は白い。
赤と白のふりふりしたワンピーススカート姿で、年のころは15.6歳ぐらいか。
女と私は数秒間無言で見つめ合った。
するとその女は全く表情を変えず、ゆっくりと右手で上を指さして言った。
「ここ、二階もありますよ」
二回目の訪問だし、当然それは知っていた。私が何か言おうとする間もなく、彼女はそれだけ言うとくるりと背を向け、駆けて行ってしまった。
「・・・・は?」






















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