いやー安心安心。
でもその安心は束の間でしかなくて、アカウント削除の二日後に、消したはずの私のアカウントは復活してて、新たな投稿を開始する。
写真は私の部屋ばかりだった。
シンクとかトイレとか浴室とか、なんかこれ水回りばっかじゃんてところから、いよいよ私の寝顔をアップされてしまう。
いくら呑気な私でもこれは流石に血の気が引いた。
侵入されてんじゃん。
で、友達だけじゃなくて警察にも相談した結果、とりあえず引っ越すことになる。
両親も心配してくれて、お父さんがすぐにでもそこから出なさいってことで、数日後には家具や荷物は全て新しいマンションに移される。
今度は女性しか住んでないマンションで、オートロックで男子禁制。
これなら大丈夫でしょって私も家族も友達も考えたんだけど、大丈夫ではなかった。
新居で生活する私の非れもない姿は、どんどんアップされていく。
風呂上がりだろうがいびきをかいて寝てようが、容赦なく問答無用でネットに晒される。
なんか、ここまでくるともういいやとか私は思うようになる。
いや嫌だけどさ、でももう逃げられないじゃん。じゃあ逃げても意味無いじゃん。
両親は実家に帰ってこいってしつこいけど、私は家族を巻き込みたくなかったし、この得体の知れないカメラマンはきっと地球の果てまで追いかけてくるだろう。
だから私は一人暮らしを続けることを選んだ。
いつ誰が巻き添えになるかわからないんだし。
私は友達も遠ざけて、なるべく一人で生活するようになる。
SNSには毎日新しい私が投稿されるけど、よくよく考えたら普通に顔出しして写真上げまくってる人もいるんだし、そんなに気にすることでもないよなーって思い始める。
いいねとかリプもほとんどないし、気にするほど多くの人の目に触れてないんだから問題ないかって結論づけた直後に、スルーできないリプライを見かける。
「修正し過ぎててクソ笑った。誰だかわかんなくなってんじゃんw」
私はショックを受ける。
ブスとか可愛くないとかなら、まあこの人の好みじゃないんだろうなで終わるんだけど、修正し過ぎって……写真は全くいじられてなくて、そのまま無加工でアップされてるのに、それなのに修正してるって、なんか酷くない?
反論してやろうかとも思ったけど、その前に改めて件の写真を確認する。
目尻は耳たぶよりも下がっていて、口角はこめかみくらいまで上がっている。
鼻は潰れてて、ほぼ平坦な皮膚に丸い穴が二つ空いている。
髪の毛は、ほとんど抜け落ちていて、残っている毛は真っ赤に染められている。
私は鏡を見て笑う。
「ほら、そっくりじゃん」

























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