茶色のセダン

わたしの友人が昔
九州へ新婚旅行にいった時のことである

夜遅く二人は日南海岸のパールロードを走っていた

予定ではとっくに旅館に着いているはずだったが

寄り道のし過ぎで遅くなってしまったのだ・・・

パールロードは左が山、右が海で道路全体の見通しがよく

対向車のヘッドライトもはるか先を行く車のテールランプもよく見える

ただ車の数は少なく、とても寂しいところであったという

後ろから来た茶色のセダンが猛スピードで追い越していった

二人も早く旅館につきたいがためにかなりスピードを出していたのだが

追い越して行ったセダンのテールランプはあっという間に見えなくなった

「えらいスピードで飛ばしてんのやなぁ」

しばらくするとまた、茶色のセダンがうしろから猛スピードで追い越して行った

あれ？っと思ってそのセダンをよく見る

セダンはすぐ先にあるカーブを曲がって見えなくなる

続いて彼の車がカーブを曲がる

視界は再び開けるが
前を走っていたはずのセダンの姿がない

「今、茶色のセダンが追い抜いてったよなぁ」

隣の新妻に確認を求める

「うん、さっきから何台も抜いて行ったけど、みんな茶色のセダンやねぇ・・・何台も」

アクセルを踏んでスピードを上げるが

前を走る車はない
先ほどの茶色のセダンは消えたとしか考えられない

彼はＣＢ無線を積んでいる
さっそく前を走る車を呼び出してみた

即、応等があった
トラックの運転手で５キロほど先からこちらに向かって走って来ているようである

事情を説明すると３キロほど先にパーキングエリアがあるから
そこで待ち合わせよう、ということになった