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不思議体験

沈丁花さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

同調、そしてお隣さんは
短編 2025/07/19 09:25 824view

 これは20年ほど前に、母から聞いた話です。又聞きした話の為に、一部創作が入っています。

 当時、母の同僚にMさんという50歳代の同僚がいた。部署は違うがMさんは母と同年代で、母の実家の近くに住んでいる。
 Mさんと母の実家がある辺りは林業が盛んである。よく手入れされた山々は堂々たる風格をもち、清渓は多くの小さな命を守り育てながら、地域の人々の暮らしを支えている。

 しかし、どんなに豊かに澄んだ川でも、必ずしも慈悲深い神の貌をしているとは限らない。上記の清い流れの川ーK川でも、水難事故が多い。実際にMさんにも、K川の水面からたくさんの人間の手が、出ているのが見えるらしい。霊感が相当に強いMさんには、よそのお家のご先祖様のお顔まで分かるという。

 そんなMさんは或るうららかな春の日に、世にも不可思議で苦しい体験をしたという。
 彼がまだ明るい時間帯にお隣さんのお庭の前を歩いて、自宅へ向かっている時のことだった。 
 突然ブワァっと重苦しい空気にまつわりつかれ、強烈な寒気に見舞われたのだ。途端にMさんは左肩や背中、胸のあたりに強い痛みを感じ、その場に倒れこんだ。冷や汗が止めどなく出て、激しい吐き気までもよおしたという。Mさんは痛む箇所を右手で押さえこみ、しばらくその場に伏したままだった。おそらく、その場所はアスファルトで覆われた小道だったのだろう。そのような場所で痛みに耐えなければならなかったMさんは、どれ程辛かっただろうか。穏やかな4月の気候で晴天に恵まれたのが、一つの幸いだったと思う。Mさんが【もう駄目だ】と思った時、体の痛みは嘘のようにすうっと引いて無くなったという。

 Mさんは狭心症を疑い、すぐに循環器科を受診したが、異常は確認できなかった。周知のとおり、この病は発作中でないと心電図には表れない。

 しかし、胸病の話はここでは終わらなかった。Mさんは翌日、お隣さんのご家族の訃報を受けたのだ。奇しくも、そのご家族の方は心筋梗塞で旅立たれたという。
 

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