仕事の疲れかもしれないなとか言い訳をしながらドアを開け、中から鍵を閉める。
二人も鍵を持ってるし、物騒な世の中だから、男一人だとしても戸締まりはしておくに越したことはない。
さて、まずは買ってきた野菜やら飲み物を冷蔵庫に入れないとなーと、足元に置いたエコバッグの中身を確認しようとした俺は、そのまま頭を床に叩きつけられる。
視界には茶色い床板しか映らず、何が起きたのか判然としないままの俺に、頭の上から声がかかる。
「声を出すな。出したら殺す。金はどこにある?」
端的に、そいつは目的を告げた。
俺は当然パニックになってて、え、金? 殺す? え、俺こんなとこで殺されちゃうの? みたいなことしか考えられなくて、そんな俺の混乱を察したのか、うつ伏せになっている俺の背中を、そいつは思いっきり踏みつける。
ぐえってカエルみたいな呻き声を出した俺に「早く言え。殺すぞ」と脅しを追加してくるけれど、俺は何も言えなかった。というか、言わなかった。
こんな奴に渡す金なんてうちには一円足りともないのだから。
「……お前、ただの脅しだと思ってんだろ?」
俺はそのセリフに身体をビクッと震わせる。
震えはほとんど一瞬で治まったんだけど、でもそれは落ち着きを取り戻したからなんかじゃなくて、左手の小指が折られたからだった。
声にならない声を出すって、こういうことなんだろう。俺は涙を目に浮かべながら、うーと唸るだけで耐える。尋常じゃなく痛い。初めての骨折が、まさか強盗によるものだなんて、想像もつかないに決まってる。
「一本ずつ折っていく。全部折ったら今度は目だ」
不思議な気持ちだった。
怖くないって言ったら嘘になるけど、でも俺は負けないって確信みたいな思いがあったんだ。
俺には守らなければならない存在がいる。
家族のためなら、家族を守るためなら、俺は何だってやるし、こんな奴に負けるわけがない。
覚悟が違うんだ。
こんな奴に、こんな奴――
「うぐっ!」
今度は薬指だった。ほんとに全部折っていくつもりなのか……。
でもここで泣き言は口にしない。
幸い、二人は外出中だ。もし今このタイミングで帰宅しても、俺がこんな状態になってたらすぐに助けを呼びに走るだろう。
最悪、俺はどうなってもいい。
絶対に二人に手を出させるわけには――
ここで俺は玄関ドアに視線を送り、自然、三和土が視界に入る。
そして、女性物の靴と、子供向けのサンダルを目にする。
まさか……帰ってきてたのか?!
だから玄関は鍵がかかっていなかったのか。


























感動や🥹
マジで伸びて欲しい。この人の書く話が好きすぎる。