なにやらブツブツ話し声が聞こえてきましたが、
内容まで聞きとれません。話し合うような声に聞こえましたし、
それぞれがなにかをブツブツ呟いているようにも聞こえました。
Bは下をうつむいたまま、目を閉じていました。どのくらい時間が
経ったのか分かりません。私はなにか楽しい事を思い出そうとして、
当時流行っていたお笑い番組「爆SHOW☆プレステージ」を必死に
思い出していました。いつのまにか、トイレ内のブツブツ呟く声は、
3~4人から10人くらいに増えている事に気づきました。
上にいる連中は私たちがココに隠れている事を知っているのではと思いました。
怖くてガタガタ震えてきました。ブツブツブツブツと気味の悪い話し声に
気が遠くなりそうでした。突然ブツブツ呟く声が消えると、
ガタンッと扉が二つ連続して開く音が聞こえた後、さらにガタンッと音がしました。
そのガタンッはトイレの個室を開く音だとすぐに分かり、鳥肌が立ちました。
「他の個室には最初から人が入っていたんじゃないか」
私と同じようにBがその可能性に気づいたのかどうかは分かりませんが、
さっきは鍵が閉まっていたのですから、外から開けたのではなく、
個室から誰かが出てきたんだと思ったのです。
そして階段を降りる足音が聞こえてきました。限界でした。
階段を降りきるまで15秒とかからないでしょう。私はBの腕をギュッと掴みました。
階段を降りる足音が中間地点くらいになった時、
Bは「うわぁぁぁ~」と情けない悲鳴をあげながら私の手を振り払い、
部屋の奥に走り出しました。その時です。Bがあの丸い輪をピョンとジャンプした
瞬間、一瞬でBの姿がなくなったのです。私はただただ唖然としました。
フラフープ状の丸い輪の向こう側に飛び越えるはずなのに、
Bが忽然と姿を消してしまった事に、恐怖よりも放心状態になりました。
私は扉から少し離れ、扉とフラフープの間に立っていました。
「謝ろう!」と思いました。「すみません。勝手に入ってしまいました。
本当にすみません」そう言おうと思いました。
扉がゆっくり開きました。開いた扉の隙間から、わざとらしく、
ひょいっと顔だけが現れました。























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