友人が言うには、その邪視の男は、金さえ積まれれば殺しもやるという。
現地のマフィア達の抗争にも利用されている、とも聞いた。
叔父が帰国する事になった1週間ほど前、邪視の男が死んだ、という。
所属する組織のメンツを潰して仕事をしたとかで、抹殺されたのだという。
男は娼婦小屋で椅子に縛りつけれれて死んでいた。床には糞尿がバラ巻かれていたと言う。
男は、凄まじい力で縄を引きちぎり、自分の両眼球をくり抜いて死んでいたという。
「さっきも言った様に、邪視は不浄な物を嫌う。汚物にまみれながら、ストリップか性行為でも見せられたのかね」
俺は、一言も発する気力もなく、話を聞いていた。さっきの化け物も、邪視の持ち主だっという事だろうか。
俺の考えを読み取ったかのように、叔父は続けた。
「アイツが本当に化け物だったのか、ああいう風に育てられた人間なのかは分からない。
ただ、アイツは逃げるだけじゃダメな気がしてな…だから死ぬ気で立ち向かった。
カッパも、人間の唾が嫌いとか言うじゃないか。案外、お経やお守りなんかよりも、
人間の体の方がああいうモノに有効なのかもしれないな」
俺は、話を聞きながら弟の夢の事を思い出して、話した。弟が助けてくれたんじゃないだろうか…と。
俺は泣いていた。叔父は神妙に聞き、1分くらい無言のまま、やがて口を開いた。
「そういう事もあるかもしれないな…00はお前よりしっかりしてたしな。
俺の鳴った携帯の事、覚えてるか?あれな、別れた彼女からなんだよ。
でもな、この山の周辺で、携帯通じるわけねぇんだよ。見ろよ。今、アンテナ一本も立ってないだろ?
だから、そういう事もあるのかも知れないな…今すぐ、山下りて帰ろう。
このロッジも売るわ。早く彼女にも電話したいしな」
叔父は照れくさそうに笑うと、コーヒーを飲み干し立ち上がった。


























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