お母さんが買ってくれた手帳は、可愛らしいキャラクターも描かれていないし、鮮やかなピンク色でもなくて、無印とかで売ってそうな、なんの変哲もない無地でベージュの表紙だった。
別に私が欲しがったわけでもなくて、あんたもそろそろ計画的に生きる習慣付けなっていう親心らしくて、まあ確かに受験前なのに全然勉強してないしなーって思いながら、とりあえずカレンダーページの7/12の四角い枠に「勉強」と書いてみる。
多分やらないけど。
「…まあ、書くだけならタダだし」
うーむ。そもそも手帳って何を書いたらいいんだろう。
中3の私が毎日何をしているかといえば、サイゼとかモスで友達と話すことくらいだし、友達だって麻美とかカレンとか渡嘉敷くらいしかいないし、生活範囲も狭ければ、交友関係も限られてるのだから、手帳なんてあっても使い道なんてなさそうだ。
でも、さすがにそろそろ勉強しないとヤバイよなって空気は麻美達もぷんぷん匂わせていて、その焦りの空気感は、未だに楽観的だった私にも伝染する。
で、7/12。
勉強しようよと放課後にいつものサイゼに集まった私たちは、1ページも教科書と参考書を開くことなく喋り倒した。
うちらヤバイよねーと、散々笑いまくって帰宅した私は、お風呂上がりになんとなく手帳を開く。
ごめんよ。結局やらなかったよ、勉強。
なんて心の中で謝りながらパラパラページをめくっていると、ふと私の手は止まる。
「ん~~?」
7/21の所に「塾に通う」と書いてあった。
当然私は書いてない。
というか、塾に通おうと思ったことすらない。きっとお母さんがこっそり書いたんだろうな〜心配性だからなぁお母さんはとか苦笑いを浮かべてたけど、明らかにお母さんの字ではない。
これは確実に違うと断言できる。なぜなら、お母さんの字は超汚いからだ。白内障だかで目が見えにくいのと、腱鞘炎だかで手が痛いらしいので、綺麗な字が書けないのだ。
でもこの字は、綺麗というか、なんか可愛らしい字で、いかにも女の子が書きましたって感じの丸みがかった文字だから、やっぱり違う。
もしかしたら誰かに代筆させたのかもしれないけど。
「塾に通わせたいのかなー」
なんか意外だったけど、まあさすがに心配にもなるかー。
それから一週間後に、麻美の従姉妹のお姉さんが講師をやってる塾に体験入塾?をする。
2回は無料で授業を受けることができるんだけど、お姉さんの教え方が上手いのか、私はたった二日で偏差値が上がった気がする。
で、夏休みから通うようになる。
意外だったのはお母さんが渋ってたことだった。お金がそこそこかかるから。
麻美に誘われたのはたまたまだったけど、むしろそれこそお母さんが望んだことじゃんって抗議した私に「は? 塾なんて行かなくても大丈夫でしょ」と言った。
なんとなく、ああ、手帳のことは内緒というか、暗黙の了解で触れちゃいけないんだろうなって空気を私は読む。
グビグビ上がった成績のおかげで、第一志望の高校に受かった私は、なんとなくクラスの空気に馴染めなくて、土日はいつも麻美たちと遊ぶ。
でも、だんだん彼女たちとも疎遠になってしまう。
喧嘩をしたわけじゃなくて、麻美はバイトを始めたし、カレンは彼氏ができて、渡嘉敷はお父さんが病気になってしまったので、働きに出たお母さんの代わりに家事をやることになってしまったせいだ。























なんか説明出来ないけど、怖い。ゾクゾクする何かを感じた。この人の3作、全部そんな感じで凄く良い。好み。続けて欲しい!
どこにたどり着くかわからない感が良かった
ポップな絵柄のホラー漫画にしたい