その後、愛美さんの遺体をどうするか迷ったらしいんだけど、どう考えても一人で食べるには多い料理の下準備を見て、恐らく俺が訪ねてくるんだろうと当たりをつける。
で、上岡さんはだんだんと俺に対する怒りが湧いてくる。俺のせいで二人はうまくいかなくなったって考えたから。
それから当然のように、俺のことも殺そうと決める。一人殺すのも二人殺すのも大差ないって思ったらしい。
ただ、愛美さんと違って俺は男だから、普通にやりあったら返り討ちにあう可能性もある。
だから、俺を殺す道具を探すんだけど、なかなか適切なのが見つからなかった。刃物で刺すのが簡単だが、返り血を浴びたら犯行が露見しやすくなるし……
ってことで、近所のコンビニにロープみたいなのとか軍手とか、色々殺人に必要な道具を買いに行ったんだけど、レジに並んでる途中でなんか馬鹿らしくなって、もういいやってそのまま帰ったらしい。
というか、俺が第一発見者になれば俺が被疑者として警察に目をつけられるし、それはそれでいいかって算段もあったとのこと。
結局捕まったのは自分だったわけだけど。
まあ、そりゃそうだよなって話だ。
衝動的に殺したってことは、証拠を消したりアリバイ工作みたいなことだってできてないだろうし、しかもマンションの防犯カメラに思いっきり入るとこと出てくとこが映ってたみたいだから、普通に捕まるよな。
上岡さんの裁判が始まって、俺も職場の人と傍聴に行ったんだけど、上岡さんは検察の質問を全肯定するから、サクサク進んでく。
懲役八年って判決が出た後に、裁判長から発言の機会を与えられた上岡さんが言った「私が殺すべきだったのは間男のほうだった」セリフで法廷はちょっとざわついて、同僚は俺の顔を見る。
裁判長が言葉の真意を計りかねてる間に上岡さんは続ける。
「八年で彼女の弔いと反省は終わりますが、恐らくその後にまた八年間の弔いと反省が私には必要になるだろう」
俺は仕事を辞めて富山の実家に帰って、二度と東京には来ないことを心に決めた。






















二人も殺したら普通に死刑、良くて無期懲役