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不思議体験

fudousanyaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

菩提寺に預けられていたもの 
長編 2025/07/10 14:03 3,690view
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「目録がついていますが、名のある太刀ではございませんようです」と畳んだ和紙を開きます

「なんだ・・」と大叔父はがっかりしたような声を出し興味を無くしますが、大叔母と父は

住職が布を解いているのを見ながら「お祖父さまがお寺に奉納したのかしらね」と呟くと

「いえ、奉納では無く預かり供養と目録になっていますので、御家族の方の希望であれば

 お返し致します」と木箱の蓋を開けました。

木箱の中には鞘に入った状態の日本刀が一振り、握りの糸がすこしほつれて、鞘には斜めに

大きな傷がついていました。

「漆塗りですね」と鞘の装飾と鍔を屈んでみた叔父が言うと、「案外立派な刀ね」と大叔母

も感心したように言うのです。

箱の中には太刀の下にやはり和紙の書きつけが入っていました。

「これはおそらくご先祖様の御手で書かれたものでしょう」と住職は取りだすと大叔母に

渡しました。「お爺様の書いたものね」と捧げるように手に取るとゆっくりと開きます。

「達筆すぎて私には読めないね」と大叔母は言うと覗き込んだ叔父が「少しなら読める

かも、ちょっと拝見します」と和紙を受け取ります。

職業柄か古文字がある程度は読める叔父が目を和紙に走らせて、「ああ・・」

「なんて書いてある?」と大叔父が急かすと

「ここに慶応五年て書いてるでしょ?これ明治二年の事ですよ。十二月二日に自分の手で

 寺に持ち込んで永代供養をお願いした。と書いてありますね きっと函館から持ち帰る

 と書いてますから、函館の戦いに行ったのは本当の事だったんですね」

「へー・・本当に行ったんだ」と父は自分の父から聞いていた事が本当だった事に感動した

「お預かりしてるのはこれだけではありません。」と住職は言うと薄い木箱も同じ場所に

重ねて置いてあったようだ。

「あ、確かに〇〇家の名前と家紋が入ってるよ」と大叔父が驚くが軽い手紙のような冊子

だと知るとまたも興味を失ったのか足を投げ出してお茶をすする。

三センチほどの厚さの木箱の中には写経した束と共に記録のような内容の紙が二枚

叔父が丁寧に開いて読んでいく

「コダテヨシノスケと言う若者の太刀だと書いてますね。約定によりコダテの家に返すべき

 ものだと、庄内藩の若者だったようです」

読み進めて行くうちに叔父は「ああ・・・」と言うと

「これは、このままにしておいた方がいいようですね」と大叔母と父に向って「そうしましょう

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