よ、ね」と念を押すように言った。
父は無論、そのつもりだ、だって他人から預かった刀だろう。と言うと大叔母は「オダテ・・
」と呟く「コダテですよ」と叔父が言うと「思い出した!お祖母様から聞いた事がある」と
突然言い出した。「お祖父さまが山形まで行って探したんですって、オダテの家て・・コダテ
が訛ってオダテオダテて言ってたのよ。部屋から泣くような声が聞こえるから気味悪くて
お祖父さまの部屋を掃除も出来なかったって・・」
叔父が「それが書いてあるんですよ」と和紙を広げて内容を説明しはじめる。
五稜郭の北から舟を降りて向かうと坂の上に幕府軍が陣を作っていた。と・・
鉄砲を撃ち登っていくと腹を撃たれた若い侍を見つけ、生きているので担いで、恐らく柵に
引っ掛かった状態なんですかね?降ろした。と書いてます
水を飲ませると口から血を吐き出して「むねん」「むねん」と言うので、なぐさめる。
庄内のコダテヨシノスケと申す、家の宝を持ち出しここで果てるのはムネンだが、お願い
致すこの太刀を家に戻して頂けないか。と頼まれ引き受ける。とあります
持ち帰り、約定の為荘内までいき調べたがコダテの家は壊され家族の行方も知れず
どうしたものかと日を過ぎる、この太刀のある部屋から「ムネン」「ムネン」と泣き声
が聞こえ始め、話が出来るものかと試してみたが「ムネン」「ムネン」を繰り返すのみ
ここに至って預け於いて供養を願い寺に預け、住職に引き継いだ。とありますね
「刀が泣くって・・」と父が手に取って鞘から抜こうとすると「あれ、鍔と鞘に針金止めしてる
るぞ」と抜けないようになっている。
「抜かない方がいいんじゃない?」と大叔母が気味悪そうに言うと「どうせサビてて抜けないよ
よ」と大叔父が言い、針金を引きちぎるようにすると「わっ」と手を離した。
ゴロリと太刀は転がってゆらゆらと震えている。
大叔父が「今・・持ったら震えたぞ・・この刀」
叔父が和紙を畳むと「ヨシノスケと言う名前だと元服前の少年ですよね。気の毒に」と言い
「どうですか、この刀はこのままお寺で供養してもらいましょうよ」と言うと大叔母も
「そうしましょう。きっとお祖父様もお寺さんに気を使って預かり供養にしたんだから、寄進
にしなかった理由は、いつか家が見つかった時に返してあげれるようにしたんだよ」
太刀は今でもこの寺に供養されながら眠ってる。 父の兄弟は今は一人も存命していない。


























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