昭和48年祖母が他界しました。私は10歳、父の兄弟は兄である大叔父、弟の叔父、姉と
四人の兄弟でした。
下の叔父が提案して「一周忌に合わせて祖母の遺骨を本家の墓にいれよう」と言い
兄弟は一年後にそれぞれの家族で本家のある東北の県に集まり、菩提寺で法要を行い
墓を動かして祖母の骨壺を埋める事にしたのです。
夏休みにそれぞれの家族が本来の故郷に集まりました。
菩提寺にはひと際大きない一枚岩の墓があり、一族の歴史を感じます。
法事を行い納骨も終わり、寺の本殿でご住職の話を聞きますとこの話の始まりとなります。
ご住職は兄弟に向かい
「先代様より頂いている目録の中に、御当家様より預かっている品がございます。大変古い
ものでして明治二年と記載されております」
大叔父が「なんだろう?明治二年というと曾祖父の代かな」兄弟は大正生まれで一番下の
叔父で昭和三年ですから祖父の親の代に寺に預けたと言うことになります。
父は「お爺さんの代となると姉さんしか知らないよな」と大叔母を見ると「お爺様に
聞いた事はないねえ」と唯一、祖父の生前に面識のある大叔母も寺に何かを預けている
事は聞いてないというのでした。
「目録ですと太刀一振りとなります。もって参りますのでお待ちください」と住職は取りに
行きます。
「太刀?それなら蔵に結構あったよな」「大筒の弾もあったね」城下町の城に近い本家は
江戸時代の終盤に家老の職で武器を預かり蔵に保管していた家柄でしたので、父たちは
子供の頃から刀や槍は見慣れていたのです。
「有名な太刀とかなら売却するか」と大叔父が言ったのですが、父も含めた他の兄弟は
(有名な太刀で価値のあるものなら戦争の時に取られてるよ)と本気にもしませんでした。
大叔母は記憶を辿っているように「お祖母様とはよくいろんな話をしたけどねぇ・・
お祖父はね。五稜郭に行ったんだって」
「五稜郭を攻めに行ったんだって母さんに聞いたことはあるよ」と叔父が口を挟むと
「それは聞いた事があるけどね、小舟で渡ったんだって」と父が母親である祖母に聞いた話
をします。
住職は黒い布に覆われた長い木箱を捧げ持つように戻って来ました。
























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