「探してないよ。回転寿司にも行かない。今日は家でゴロゴロしてたい気分なんだ。」
私がそう言い放つと、父は驚いたような顔をした。それすらも機械的な顔の動きだったが。
私は乾いた目を潤すために瞬きをした。
そして目を開けると同時に、見開いた。ヒイ…という声が無意識のうちに出てしまった。
目の前にいたのは父ではなかった。色白で、白目がなく、ロングヘアで、目が頬に差し掛かるほど大きく、血の気がない、老いた女性。とてもこの世のものとは思えなかった。瞬きをするコンマ数秒にも満たない時間の間に、こいつは姿を変えた。
「ぼうや、おばちゃんのこと探してたんだろう。
ほら、回転寿司に連れていってあげるよ。
ぼうやのパパもママも、にぃにもバァバも、
そこにいるよ。」
「あ、あの…おばちゃん、誰ですか…」
「ぼうや、おばちゃんのこと探してたんだろう。
ほら、回転寿司に連れていってあげるよ。
ぼうやのパパもママも、にぃにもバァバも、
そこにいるよ。」
「あの、ここら辺に回転寿司はないですけど」
「なんだい、いつも窓から不思議そうに見ているじゃないか。回転寿司を。
島から見える、絶景が楽しめるんだよ。
ぼうやのパパもママも、にぃにもバァバも、
そこにいるよ。」
「島に浮かんでいるのは神社じゃないんですか」
「…。ほら、ゴタゴタ言ってないで、早く来るね!」
その老婆は強引に私の手を掴み、外へ連れ出そうとしてきた。しかし私はその手を振り解き、祖母の部屋にある祖父の仏壇まで駆けた。必死に助けてくれ、助けてくれと祈った。
老婆がゆっくりとこちらへ歩いてくる。コツ、コツ…と。しかし、部屋の直前でその足跡は消えた。
私は眠るように仏壇の前で気を失ってしまった。それからは、あまりよく覚えていない。
目が覚めたらあの時のように、家族がリビングにいた。でも今回は前回のように、無視されることはなかった。神社の話題を出さなかったからだ。
ふと窓の外に目をやると、神社は島ごと消えていた。






















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