左太ももを強くぶつけはしたが他は無事で、何とか起き上がることができた。
しかしMには動く気配がない。
声をかけても返事はなく、慌てて取り落としたライトを拾いMに怪我がないか確認した。
暗くてよく見えないが少なくとも流血はなさそうだったが十分に状況は悪い。
焦りつつもとにかくMをダムから引き上げて上の道で助けを呼ぼうと考えた。
しかし、Mの両脇を抱えトンネルへ引き返すため後ろ向きに進もうとしたが足が動かない。
筋力の問題ではなく、身体が鉛にでもなったように動かない。
11月の寒さにも関わらず嫌な汗が背中に滲む。
頭が真っ白になりトンネルへ引き返すという意志が途切れた途端、尻もちをついて呆然としてしまった。
少しして体が動くことに気づくと、ダムから上の道へ登るための別の階段や坂があるはずと思い直し、今度はトンネルに戻るのではなく先へ進むことにした。
しかし動こうとするとやはり体が重い。
だが、何故か今度はゆっくりと動くことができた。
体は重いのだが、前方から引っ張られているような不思議な感覚があった。
動けることを確認するとMを担ぐ。
意識のないMの体は力なく安定しないためおんぶの体勢までは持っていけなかった。
結果、Mの股に右腕を差し込み肩に担ぐ形となる。
Mはかなり華奢で、身長も小さかったから何とかなったが逆の立場だったらと考えるとゾッとする。
先ほどぶつけた左太ももには鈍い熱を感じ始めていたが、左手でMの腕を、右手でMの脚を掴み、前屈みになって暗闇の中を進む。
ちょうど進行方向には、例のダム中心に位置する山があり、そこへ引き寄せられているかのように感じた。
それが救いの導きなのか、引きずり込む魔の手なのか分からなかったがいずれにしろ進む以外の選択肢はなかった。
暫く進んでも上へ登る道は見当たらなかったが、いつの間にか体にかかる重さが消えていることに気づいた。
Mを担ぐ重さはあれど、不可解な重圧が消えたことに少し安堵した瞬間だった。
「止マッテ」
Mの声ではっきりとそう聞こえた。
足を止めて確認する。
「起きたんか?良かった、歩けるか?」
返事は返ってこない。
自分の鼓動がやけに速く大きくなっていることに気づきながら再度問いかけた。
「おい、歩けるかって聞いて「後ロ向イテ」


























こわ~~~~~
投稿主さん
奇妙山→現在の知明山かな
もしあってたら奇妙山神教間歩で調べてみて。東大寺のお守りは最高のチョイスだったかもね