結局、ビビリと煽られたり水位が上がれば二度とチャンスはない(そんなことはない)とか熱弁され、最終的に引っ越し前の思い出作りと言う便利な言葉で自分を騙し好奇心を優先することにした。
行くと決まれば盛り上がり、早速計画を立て始めどうせなら丑三つ時に行くことにした。
当然親には嘘をついた。
この年のしし座流星群は約30年ぶりの大出現が予想されていて、数日後(詳細は忘れたが11月20日前後)の午前2時にピークが訪れることがテレビで何度も特集されており、すぐに深夜外出の言い訳として取り入れることに思い至った。
引っ越し前ということもあってかMと近くの公園でしし座流星群を見ると言えば母はすんなりと了承してくれた。
決行当日、終礼が終わると急いでMと学校を出た。
帰りにダ◯ソーでライトを買って夜にMの家の前で落ち合う約束した。
家ではカモフラージュのため親に双眼鏡を貸り、午前一時に起こしてくれとお願いして早く寝た。
少し早く着いた待ち合わせ場所には、既にマウンテンバイクにまたがったMが待っており、出発を待ち切れない様子だった。
Mはライト、ロープを持ってきていたが、問題なのはお守りだ。
俺は秋の遠足で奈良の大仏を訪れた際に買ったお守りを持参したが、Mはウーロン茶のおまけでついてきたモー娘のゴ◯キのキーホルダーを持ってきた。
お守りとライトを左右のポケットに、それ以外をナップサックに入れて早速目的地へ向かった。
住宅街の端から山道を安全運転で下っていく。
ダム外周を通る国道へ出てしばらく進んだら街灯もない脇道に入る。
この脇道はしばらく車が走っていないのか、度々大きな石が転がり、草葉が飛び出していた。
遠くでかすかに響く走り屋のエンジン音、すぐ真横には暗くて底の見えないダム、時折聞こえる動物の足音、日中ですら歩行者のいないこの道は丑三つ時というだけで既に怖かった。
都会の光は遠く、山に囲われたダムでは星がよく見え、次第に増える流星を眺めながら無事帰れますようにと願った。
目的のトンネルの上まで到着したらダムへ下る道をライトで照らしながらゆっくり歩く。
足場は思ったほど悪くなかったが右手に持つ100円ライトの光が弱々しく頼りなかった。
薄っすらとした月明りを頼りにトンネルへ近づいていく。
ついに目前となった長さ二十メートル程の手彫りのトンネルを見て息をのむ。
現代では見ることのない荒々しく削られたトンネルは明治の終わりか大正の頃に手掘りで造られたものだと書写の時間に教頭から教えてもらった。
Mの腕時計で時間を確認し、丑三つ時の午前二時丁度をまってから出発することにした。
尻込みしそうになる気持ちを堪え、ここを渡るために多大な努力をしてたどり着いたんだと自分に言い聞かせ一歩を踏み出す勇気とする。
安全のために転倒しないよう、お互いの服の背中の部分を掴み横並びで真っ直ぐ進んだ。
戦々恐々としつつもトンネルを抜けるのは一瞬で、何事もなかったことに肩を撫で下ろし帰ろうかと考えた時だった。
隣のMが短い声を発し前へ倒れ込む。
倒れるMが俺の背中を押しつつ、俺もMを支えようと服を引っ張るが、踏ん張ろうと前に出した足が空を切り、二人して転んだ。
足元の道が崩れ段差ができていたのだ。

























こわ~~~~~
投稿主さん
奇妙山→現在の知明山かな
もしあってたら奇妙山神教間歩で調べてみて。東大寺のお守りは最高のチョイスだったかもね