「目覚ましの音がするんだ」
少し苛つきながら友人のからの電話に出ると、理解不能な相談をされた。
大学の卒論について1月末の締め切りが迫り、怠惰な学生だった俺たちは徹夜での作業に追われていた。
ようやく完成の目処がついたという頃、同じく忙しいはずの友人から電話があった。
どうせ締め切りに間に合うか不安になって、同じく遅れている俺の進捗を聞いて安心したいだけだろうと思った。
無視しようかと思ったがここまで同じゼミでやってきた仲間だ、一息つくついでに話を聞いてやろうと電話に出たところ、思いがけないことを言われた。
意味不明で電話を切ろうかと思ったが、あまりに真剣な口調なため少し話を聞いてみた。
「どういうこと?当たり前やんけ、俺だって仮眠とるときは寝すぎないようアラームをかけてる」
「違う、子供の頃に実家で使ってた金属の目覚まし時計・・・ベルのけたたましい音が鳴るんよ」
意味不明だった。
寝不足で幻聴でも聞こえてるのだろうと思ったが、卒論完成の目処がついていたため食事がてらファミレスで話を聞くことにした。
ドリンクバーでお茶をとり、席に着くとぽつりぽつりと友人は話し始めた。
以下に、できる限りそのまま友人の体験を書いていく。
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小学生の頃、夢を見るのが好きだったんだ。
寝ている時の夢だ。
元々寝つきが悪く朝が弱かった俺は、睡眠が浅いのか毎日にように夢を見たんだ。
きっかけは金曜◯ードショーで耳を◯ませばを視聴したことだったと思う。
作品に引き込まれ楽しんだものの最後まで見れずに23時には既に寝ていた。
でも俺は夢の中でも引き続き映画を楽しんでいた。
このとき、強く思い描けば見たい夢をみることができるんじゃないかと考え始め、夢をコントロールしようとするようになった。
毎晩寝る前に、何の夢を見るか決めて強く思い描いて寝る。この繰り返しだった。
ただ強く思い浮かべるのではなく、自分がキャラクターの一人になりきることで成功率は上がっていった。
夢を意識し続けることで、できることが増えていく。
誰もが丁度いいところで目覚ましが鳴り、夢を中断して悔しい思いをしたことがあるだろ?
毎日夢を見る俺も勿論そうだったんだ。
でも、いつの間にか目覚まし音が鳴り響いていても抵抗して夢の中に留まり起きないでいることができるようになっていた。
母さんに毎朝怒られるようになったけど。
今になって思えばこのあたりで手を引いておくべきだったと思う。
学校の授業中も、友達と遊んでいても、早く寝たい、夢を見たいという思いが強くなり夢中になって自制が利かなくなっていった。
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