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呪い・祟り

Flounderさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

六甲降ろしのお地蔵様
長編 2025/06/12 22:37 6,398view
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更に数カ月が経ち、山菜が取れるシーズンが来た頃です。
この時期には春山での遭難や山菜取りで道に迷ったなど、自衛隊に捜索の応援が来ることが多かったそうです。

「地元の老人が山菜を取りに行ったまま帰ってこない」との通報と応援要請が来た時、Aも呼ばれたそうです。
その老人はすぐに無事に保護され、Aたちが駐屯地に帰ろうとした時でした。

「不審な乗用車1台を発見。中に複数の人影が見えるが、動いていない。応援を求む」と、部下から無線が入りました。
Aは過去の捜索の際にもそのような無線を受けたことがあり、その経験から「自殺か…」と遺体と対面する覚悟を決めたそうです。

警官を引き連れ、その乗用車の元にたどり着いたとき、Aは「ん?」と違和感を覚えました。
車の様子が妙だったのです。酷く汚れてはいましたが、比較的年式が新しくグレードもそれなりに高い車で、「自殺するほど追い詰められた奴が乗る車じゃないな」と思いました。

サイドウィンドを見ても、車内を密封するテープが張っておらず、「排ガスや練炭じゃない」とAは直感しました。

先着していた警官がドアを開けると、中に乗っていたのは、半分腐敗し、半分ミイラ化した男性と思しき3体の遺体でした。
木陰に駆け込み、胃の中身を吐き出している新人自衛官を尻目にAは遺体を観察しました。

既に人種さえ分からない状態になっていましたが、何故か3人ともズボンや下着を脱ぎ、下半身が裸であることをAは不思議に思いました。

そして、その瞬間にAは車を見た時の違和感の正体に気付きました。
「この車は、去年見なくなった半グレ共のだ!」と。
遺体をよく見れば、残された装身具は行方不明になった半グレ3人組が身に着けていた物に見えました。
ベテランらしい警官も「奴らか…?」と呟いていました。

「これ、何ですかねえ?」と、その時、別の警官が車の中から灰色の何かを引きずり出しました。
「あっ!!」Aともう1人の自衛官は思わず声を上げ、その場にいた全員の注目を集めてしまいました。

それは、去年駐屯地から行方不明になったお地蔵様でした。

その後の事ですが、半グレの3人は「自衛隊基地に忍び込み、転売かイタズラか何かの目的でお地蔵様を盗み、その後道に迷って雪の吹き溜まりに突っ込み、身動きが取れなくなった車の中で排ガスが逆流、窒息した事故死。下半身が裸だったのは錯乱し、服を脱いだのだろう」と結論付けられました。

しかし、Aはどうしてもそうは考えられなかったそうです。
「まるで、お地蔵様が何か不思議な力で3人を地獄に落とし、女性の無念を晴らしたのではないか」と今でも思っているそうです。

この話を私と一緒に聞いていたのが、私以上のオカルトマニアのクラスメイトでした。
彼は「『鰯の頭も信心から』の言葉通り、信じる者が多ければどんなものでも何かしらの力が宿る。不特定多数の自衛官から日々拝まれ、お供え物も毎日欠かさず貰っていたお地蔵様が、神に近い力を持ったというのも別に矛盾がある訳ではない」と考えていました。

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