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妖怪・風習・伝奇

葉月さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

ユメカリ
短編 2025/06/11 14:44 2,802view
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そして、決定的な夜が来た。

俺は夢の中で“誰かの母親”と争っていた。
泣きながら叫ぶ女の子。
怒鳴る女。
そして――女の子の手から包丁が振り下ろされた。

目が覚めたとき、俺の手は血で濡れていた。

台所に行くと、母が倒れていた。
胸から血を流して、苦しそうにうめいていた。

俺は包丁を握っていた。

でも違う。
俺じゃない。
“俺の夢を見た誰か”が、俺の体を使ったんだ。

「……春人?」

母が、かすれる声で呼んだ。
それが、最期だった。

それから大騒ぎになった。
しかし俺には、警察も、病院も、すべて夢のようだった。

「錯乱状態でした」「精神鑑定を」「未成年」「過去の病歴」

俺はただ一つだけ覚えている。
母が死んだ夜、夢の中で“あの獣”が笑っていたこと。

「夢を交換したでしょ?
 君の時間と、誰かの時間。
 これで貸し借り、なし。」

ユメカリ。
夢を喰らい、記憶を喰らい、現実を侵す化け物。

最初に言われた言葉を思い出す。
『君の夢、ひとつちょうだい。代わりに、他の誰かのをあげる。』

たった一度、軽くうなずいた。
その罠の代償は……母の命だった。

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コメント(1)
  • 最初に夢って出てきたときは将来の夢と思っていた

    2025/06/12/12:20

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