何日かあけて、やはり鹿のことが気になった私は小屋に戻ってきました。
すでに鹿はいません。
並べられた鹿の首、いったいどれが私の見た鹿だっ
たのでしょう。
言い様のない気持ち悪さと無力感が私を襲います。
全て諦めて帰ろうとした、その時でした。
さあっ、とそよ風が吹いたと思うと私の後ろにあの鹿が立っていました。
彼からは恨みつらみや憎しみは感じません。
やはり私には気づいてないようで、しかしその目は希望に満ち足りた様に感じました。
彼は何事もないかのように風を纏って山の方へ走り去り、気づけば私の目からもう消え去っていました。
立ちすくむ私はただ泣くことしかできませんでした。
これが私が生涯一度に体験した心霊現象です。
未だにおじさんは健在で、祖母曰く今も鹿の首は増えているのだとか。
さらには動物だけでなく自分の家族にも暴力を振るうようになったそうです。
彼が死ぬことがあれば、それは動物たちの怨霊が彼を殺すときでしょうか。
ただあの鹿をみた私にはそう思えません。
彼はまた動物を殺して、そして殺された者たちはただその苦しみから解放されるだけなのでしょう。
そしておじさんは周りの全てを傷つけて生き続ける。
私にはそう思えてなりません。
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怖いというか、何か人間のひどさ みたいな感じですね。