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心霊

皓江さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

鹿の目
短編 2025/05/20 17:09 1,803view
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私の母方の実家の話です。
そして私が直接心霊現象にあった話です。
(それ自体は恐ろしくはないのですが。)

母方の実家は随分な田舎でよく山から動物が現れることがあります。
犬や猫はもちろん、鹿や猿も現れることがあり、鹿が車に衝突したり、猿が干し柿を頂戴することが日常茶飯事でした。
あと祖母は徳が高いのか、そうした動物に好かれていたようで、家に何度か、そうした動物がやってくることもありました。

しかし近所に住むおじさんは、そんな祖母とは対照的な人物でした。
動物に手を出すことに躊躇いのない人なのです。
彼の住む家の庭を覗くと、しょっちゅう猿や兎のような小動物、はては鹿のような動物が鎖に繋がれていました。
彼らが逃げようとするとオールのような鈍器をどこからかもってきて叩きつけるのです。

動物たちは良くて半殺しで、それ以上となると遠目でも痙攣して死んだように動かなくなります。
それだけならまだしも、猿の駆除を依頼されていたらしのですが、猿は全身血まみれのまま側溝に放置していましたし、また祖父についさっき肉を捌いてきたのか、全身血まみれで猪肉を私にきたのです。
それもいいことをした、と思っていたのか彼は満面の笑みでした。(正直私も祖父もドン引きしていましたが。)
私は動物を殺すこと自体には嫌悪を示しませんが、その容赦のなさや、平気で、それも楽しむかのように動物を殺すおじさんには恐怖を覚えていました。

ここで心霊現象にまつわる話です。
おじさんは自分が殺して捌いた鹿の頭骨を離れにある小屋に放置していました。
数十匹にのぼる頭骨の山は首塚の様。
おじさんがまるで勲章でも自慢するかのような、そんな想像が私の頭に浮かびます。

ある日そんな曰く付きの小屋をちらっと見たときのことです。
一匹の鹿が生きたままそこに繋がれていたのです。

驚いて近づきます。(本当は鹿に襲われるかもしれないので大分危なかったのですが。)
しかし鹿は動きません。よく見ると首や胴の部分が腫れ上がり、足に至っては逃げられないように痛め付けた上で鎖で縛られていたのです。
あまりの惨状に鹿から目を離せませんでした。
不意に鹿と目が合います。
正直動物の感情なんて私には読み取れません。
しかしその時ばかりは私にも理解できました。

虚ろな目はどこまでも暗く、目の前の私にさえ気づいていない。
深い深い絶望を感じました。きっと自分が殺されることをただ受け入れているのでしょう。
私は逃げ出しました。鹿は何もしませんでした。
ですから私には恐ろしくて悲しくてしょうがなかったのです。
その夜は彼を見捨てた罪悪感や彼の余りの姿に悲しみが止まりませんでした。

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コメント(1)
  • 怖いというか、何か人間のひどさ みたいな感じですね。

    2025/06/03/10:15

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